源氏物語「宵過ぐるほどに 4/4」(夕顔)   問題

 光源氏は17歳。そのころ源氏は六条に住まっていた六条御息所という女性のもとに通っていた。その途中にある、病を得ている乳母の家を見舞っていたころ知り合った女性と親しい仲となった。この女を「夕顔」と呼び習わしている。
 次は、夕顔と某院で過ごした夜、夕顔を嫉妬する美女の霊が現れる。夕顔は息絶えている。頼りにしている惟光(これみつ)もいない。これを読んで後の問いに答えよ。


 この男を召して、「ここに、いとaあやしう、物に襲はれたる人の b悩ましげなるを、ただ今惟光朝臣の宿る所にまかりて、急ぎ参るべきよし言へと仰せよ。なにがし阿闍梨そこにものするほどならば、ここに来べきよし忍びて言へ。かの尼君などの聞かむに、おどろおどろしく言ふな。かかる歩きゆるさぬ人なり」などもののたまふやうなれど、胸はふたがりて、この人を空しくしなし cむことのいみじく思さるるに添ヘて、おほかたの dむくむくしさ譬へん方なし。夜半も過ぎ eけんかし、風のやや荒々しう吹きたるは。まして松の響き木深く聞こえて、気色ある鳥のから声に鳴きたるも、梟はこれ fやとおぼゆ。うち思ひめぐらすに、こなたかなたけ遠く疎ましきに人声はせず、などてかくはかなき宿は取りつるぞと、くやしさもやらん方なし。右近はものもおぼえず、君につと添ひたてまつりて、わななき死ぬべし。また、これもいかならんと心そら gてとらへたまへり。我ひとり hさかしき人 iて、思しやる方ぞなきや。灯はほのか jまたたきて、母屋の際に立てたる屏風の上、ここかしこのくまぐましくおぼえたまふに、物の足音ひしひしと踏みならしつつ背後より寄り来る心地す。惟光とく参らなんと思す。あり処定めぬ者にて、ここかしこ尋ねけるほどに、夜の明くるほどの久しさは、千夜を過ぐさむ心地したまふ。

問1 aあやしう・b悩ましげなる・dむくむくしさ・g疎ましき・hさかしきの意味を言い切りの形で記しなさい。★

問2 c・e・f・g・i・jを文法の観点から簡潔に説明しなさい。★

問3 問題本文中に一カ所、文法上意図的な誤りをおかしていて文意が通じない個所がある。このことについての次の問に答えなさい。
 (1)その個所を正したものを文節単位で記しなさい。★★★
 (2)(1)とすべき理由を説明しなさい。★★★

問4(1)この宿に対する源氏の感想を10字以内で記しなさい。★★
  (2)源氏の態度と心理を40字以内で説明しなさい。★★★

問5 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★


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