源氏物語「宵過ぐるほどに 2/4」(夕顔)   問題

 光源氏は17歳。そのころ源氏は六条に住まっていた亡き東宮の御息所(「六条御息所」と呼ばれる)のもとに通っていた。その途中にある、病を得ている乳母の家を見舞っていたころ、知り合った女性と親しい仲となった。
 次は、その女性と別邸で過ごした時の出来事である。この女を「夕顔」と呼び習わしている。これを読んで後の問いに答えよ。


 風すこしうち吹きたるに、人は少なくて、さぶらふかぎりみな寝たり。この院の預りの子、睦ましく使ひたまふ若き男、また a上童ひとり、例の随身ばかりぞありける。召せば、御答して起きたれば、「紙燭さして参れ。随身も @弦打して絶えず声づくれと仰せよ。人離れたる所に心とけて寝ぬるものか。惟光朝臣の A来たりつらんは」と問はせたまへば、「さぶらひつれど仰せ言もなし、暁に御迎へに参るべきよし申してなん、 Bまかではべりぬる」と聞こゆ。このかう申す者は、滝口 bなりければ、弓弦いと cつきづきしくうち鳴らして、「火危し」と言ふ言ふ、預りが曹司の方に去 d eなり。内裏を思しやりて、名対面は過ぎ fらん、滝口の g宿直奏今こそ、と推しはかりたまふは、まだいたう更け hにこそは。帰り入りて深りたまへば、女君はさながら臥して、右近はかたはらにうつ伏し臥したり。「こはなぞ、あなもの狂ほしのもの怖ぢや。荒れたる所は、狐などやうのものの人おびやかさんとて、け恐ろしう思はするならん。まろあれば、さやうのものにはおどされじ」とて引き起こしたまふ。「いとうたて C乱り心地のあしうはべれば、うつ伏し臥してはベるや。御前にこそ iわりなく思さるらめ」と言へば、「そよ、などかうは」とてかい探りたまふに息もせず。引き動かしたまへど、なよなよとして、 j我にもあらぬさまなれば、いといたく若びたる人にて、物にけどられぬるなめりと、 kせむ方なき心地したまふ。【夕顔】

問1 a上童、g宿直奏の読みを現代仮名遣いで記しなさい。★
   cつきづきしく、iわりなく、j我にもあらぬ、kせむ方なきの意味を言い切りの形で記しなさい。★

問2(1)bとeの「なり」の文法上の異同を説明しなさい。★★
  (2)d、f、hの「」の文法上の異同を説明しなさい。★★

問3 @弦打して絶えず声づくれと命じたのは何のためなのか説明しなさい。★★★

問4 A来たりつらんはの口語訳として最もよいものは、次のどれになるか。記号で答えなさい。★★
   イ 来るようなことをいっていたが
   ロ きっとやってくるだろう
   ハ 確か来ていたはずだが、どうしたのか。
   ニ 来ないようなことになっていたが
   ホ きっと来ないと聞いていたが、

問5 Bまかではべりぬるで使用されている敬語の、敬語の種類と敬意の方向を説明しなさい。★★

問6 C乱り心地のあしうはべればを口語訳しなさい。★★

問7 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★


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