枕草子「宮に初めて参りたるころ」(百八十四段)1/3  問題

 次の文章は、筆者が中宮のもとに初めて出仕したときの記事である。よく読んで後の問いに答えなさい。

 宮に初めて参りたるころ、もののはづかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々参りて、三尺の a御几帳の後ろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふを、 @手にてもえさし出づまじう、わりなし。「これは、とあり、かかり。それが、かれが。」などのたまはす。 b高坏に参らせたる大殿油なれば、髪の筋なども、Aなかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど、念じて見などす。いとつめたきころなれば、さし出でさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたしと、見知らぬ里人心地には、かかる人こそは世におはしましけれと、 おどろかるるまでぞ、まもり参らする
 暁にはとく下りなむといそがるる。「葛城の神もしばし。」など仰せらるるを、いかでかは筋かひ御覧ぜられむとて、なほ伏したれば、御格子も参らず。女官ども参りて、「これ、放たせ給へ。」など言ふを聞きて、女房の放つを、「まな。」と仰せらるれば、笑ひて帰りぬ。ものなど問はせ給ひ、のたまはするに、久しうなりぬれば、「下りまほしうなりにたらむ。Bさらば、はや。夜さりは、とく。」と仰せらる。ゐざり隠るるや遅きと、上げちらしたるに、雪降りにけり。登花殿の御前は、 c立蔀近くてせばし。雪いとをかし。
 昼つ方、「今日は、なほ参れ。雪に曇りてあらはにもあるまじ。」など、たびたび召せば、この局のあるじも、「見苦し。さのみやは籠りたらむとする。 Cあへなきまで御前許されたるは、さおぼしめすやうこそあらめ。思ふにたがふはにくきものぞ。」と、ただいそがしに出だし立つれば、あれにもあらぬ心地すれど参るぞ、いと苦しき。火焼屋の上に降り積みたるも、めづらしう、をかし。(百八十四段)

問1 a御几帳、b高坏、c立蔀の読みを現代仮名遣いのひらがなで記しなさい。★

問2 Aなかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど、念じて見などすを現代語訳しなさい。★★

問3 Bさらば、はや。夜さりは、とく。を省略されている内容を補って現代語訳しなさい。★★

問4 Cあへなきまで御前許されたるは、さおぼしめすやうこそあらめ。思ふにたがふはにくきものぞ。について、
   (1)あへなきまで御前許されたるは、さおぼしめすやうこそあらめ。を現代語訳しなさい。★★
   (2)「おぼしめす」と「思ふ」の使い分けがされている理由を説明しなさい。★★★

問5 「枕草子」の作者名・ジャンル名・成立した時代・作者が仕えた主人の名(2字)を順に記しなさい。時代は、前・中・後期まで答えること。★


advanced Q.1 @手にてもえさし出づまじう、わりなしと、なぜ思ったのか説明しなさい。

advanced Q.2 おどろかるるまでぞ、まもり参らするの「るる」を自発ととる場合と尊敬ととる場合、どういう意味になるか。それぞれ主語を補って現代語訳しなさい。



枕草子「宮に初めて参りたるころ」1/3 解答用紙(プリントアウト用)

枕草子「宮に初めて参りたるころ」 1/3  解答/解説

枕草子「宮に初めて参りたるころ」1/3 現代語訳



枕草子「宮に初めて参りたるころ」2/3 問題

枕草子「宮に初めて参りたるころ」3/3 問題



枕草子「宮に初めて参りたるころ」(百八十四段)1/3  exercise

 次の文章は、筆者が中宮のもとに初めて出仕したときの記事である。よく読んで後の問いに答えなさい。

 宮に初めて参りたるころ、もののはづかしきことの数知らず、涙も落ちぬべければ、夜々参りて、三尺のa御几帳の後ろに候ふに、絵など取り出でて見せさせ給ふを、 @手にてもえさし出づまじう、わりなし。「これは、とあり、かかり。それが、かれが。」などのたまはす。 A高坏に参らせたる大殿油なれば、髪の筋なども、 bなかなか昼よりも顕証に見えて cまばゆけれど、 d念じて見などす。 Bいとつめたきころなれば、さし出でさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、いみじう eにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたしと、見知らぬ里人心地には、かかる人 fこそは世におはしましけれと、 Cおどろかるるまでぞ、まもり参らする。 暁にはとく下り gなむといそがるる。「葛城の神もしばし。」など仰せらるるを、いかでかは筋かひ御覧ぜられむとて、なほ伏したれば、御格子も hず。女官ども参りて、「これ、放たせ給へ。」など言ふを聞きて、女房の放つを、「まな。」と仰せらるれば、笑ひて帰りぬ。ものなど問はせ給ひ、のたまはするに、久しうなりぬれば、「下りまほしうなりにたらむ。 Dさらば、はや。夜さりは、とく。」と仰せらる。 Eゐざり隠るるや遅きと、上げちらしたるに、雪降りにけり。登花殿の御前は、 i立蔀近くてせばし。雪いとをかし。 昼つ方、「今日は、なほ参れ。雪に曇りてあらはにもあるまじ。」など、たびたび召せば、この jのあるじも、「見苦し。さのみやは籠りたらむとする。 kあへなきまで御前許されたるは、 Fさおぼしめすやうこそあらめ。思ふにたがふはにくきものぞ。」と、ただいそがしに出だし立つれば、あれにもあらぬ心地すれど参るぞ、いと苦しき。火焼屋の上に降り積みたるも、めづらしう、をかし。

問1 a「御几帳」、i「立蔀」、j「」の読みを現代仮名遣いのひらがなで記しなさい。

   b「なかなか」、c「まばゆけれ」、d「念じ」、e「にほひ」、h「参ら」、k「あへなき」の意味を記しなさい。活用語は終止形で記すこと。

   f「こそ」の結びの語はどれか、基本形にしたものを記しなさい。

問2 gの「なむ」と同じ用法となるものを次から一つ選んで記号で答えなさい。
    ・いざ桜我もちり イなむひとさかりありなば人に憂き目見え ロなむ
    ・その人かたちより心 ハなむまさりける。
    ・かねてより思ひかけし事に ニなむ。
    ・願はくは花の下にて春死 ホなむそのきさらぎの望月のころ

問3 @「手にてもえさし出づまじう、わりなし」について、
   (1)現代語訳しなさい。
   (2)そう思った理由を説明しなさい。

問4 A「高坏に参らせたる大殿油なれば」B「いとつめたきころなれば」はそれぞれどこにかかるのか、次から記号で答えなさい。

   A… ア 髪の筋なども  イ 昼よりも顕証に見えて  ウ まばゆけれど  エ 念じて見などす
   B…   ア さし出でさせ給へる        イ はつかに見ゆるが  ウ いみじうにほひたる薄紅梅なるは  エ 限りなくめでたし

問5 C「おどろかるるまでぞ、まもり参らする」の「るる」を自発ととる場合と尊敬ととる場合、どういう意味になるか。それぞれ主語を補って現代語訳しなさい。advanced Q.

   D「さらば、はや。夜さりは、とく」を省略されている内容を補って現代語訳しなさい。

問6 E「ゐざり隠るるや遅きと、上げちらしたる」には、(1)清少納言が中宮の御前から下がるや否や、女房たちが格子を上げた、(2)清少納言が自分の局に下がるや否や、格子を上げた、という二つの解釈がある。(2)のように解釈した場合、清少納言はなぜそのようなことをしたと思うか。その理由として適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
   ア 一日中部屋をしめきっていてあまりにも陰気くさかったから。
   イ すでに夜が明けたと思ったから。
   ウ めずらしく雪が降り、宮中の庭の雪景色が見たかったから。
   エ 緊張とはずかしさで上気してほてる顔を冷やそうと思ったから。

問7 F「さおぼしめすやうこそあらめ。思ふにたがふはにくきものぞ」で「おぼしめす」と「思ふ」の使い分けがされている理由を説明しなさい。

問8  この文章には、清少納言が初めて宮仕えした折の感動がすがすがしく描かれている。
    (1)宮仕えに出る以前の自分自身のことを、清少納言はどのように表現しているか。本文中から一語で抜き出せ。
    (2)人目を避けて夜だけ出仕して暁には退出しようとする清少納言をからかう中宮の発言がある。その言葉を本文中から抜き出せ。

問9 この文章を三段落に分けると、第二、第三段落はどこからはじまるか。それぞれの段落の初めの三字を抜き出し順に記しなさい。

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枕草子「宮に初めて参りたるころ」 1/3  解答/解説

枕草子「宮に初めて参りたるころ」1/3 現代語訳



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