鴻門之会(史記)2/3 書き下し/ 現代語訳

 於是張良至軍門、見樊?。樊會曰、「今日之事何如。」良曰、「甚急。今者項荘抜剣舞。其意常在沛公也。」?曰、「此迫矣。臣請、入与之同命。」?即帯剣擁盾入軍門。交戟之衛士、欲止不内。樊?側其盾、以撞衛士仆地。?遂入、披帷西嚮立、瞋目視項王。頭髪上指、目眦尽裂。項王按剣而?曰、「客何為者。」張良曰、「沛公之参乗樊?者也。」項王曰、「壮士。賜之卮酒。」則与斗卮酒。?拝謝起、立而飲之。項王曰、「賜之?肩。」則与一生?肩。樊?覆其盾於地、加?肩上、抜剣切而啗之。

 ↓《書き下し》

 是(ここ)に於(お)いて張良軍門に至り、樊會(はんくわい)を見る。樊?曰はく、「今日の事何如(いかん)」と。良曰はく、「甚だ急なり。今者(いま)項荘剣を抜きて舞ふ。其の意常に沛公に在るなり」と。?曰はく、「此れ迫れり。臣請ふ、入りて之と命を同じくせん」と。?即(すなは)ち剣を帯び盾を擁して軍門に入る。交戟(かうげき)の衛士、止(とど)めて内(い)れざらんと欲す。樊?其の盾を側(そばだ)てて、以て衛士を撞(つ)きて地に仆(たふ)す。?遂(つひ)に入り、帷(ゐ)を披(ひら)きて西嚮して立ち、目を瞋(いか)らして項王を視(み)る。頭髪上指し、目眦(もくし)尽(ことごと)く裂く。項王剣を按(あん)じて?(ひざまづ)きて曰はく、「客(かく)何(なん)為(す)る者ぞ」と。張良曰はく、「沛公の参乗樊會といふ者なり」と。項王曰はく、「壮士なり。之に卮酒(ししゆ)を賜(たま)へ」と。則ち斗卮酒を与ふ。會拝謝して起ち、立ちながらにして之を飲む。項王曰はく、「之に?肩(ていけん)を賜へ」と。則ち一の生?肩を与ふ。樊會其の盾を地に覆(ふ)せ、?肩(ていけん)を上に加へ、剣を抜きて切りて之を啗(くら)ふ。

 ↓《現代語訳》

 そこで張良は軍門に行き、樊會に会った。樊會は「今日の様子はどうなっていますか。」と言った。張良が、「緊急事態だ。今、項荘が剣を抜いて舞っている。その狙いは沛公を殺すことにある。」といった。會は「それは大変だ。どうか宴席に入って(沛公と)命をともにさせていただきたい。」と言った。會はすぐに剣を腰に着け、盾をかかえて陣営の門に押し入った。軍門を守備する兵士は、止めて中に入らせまいとした。しかし、樊會は持っていた盾を傾け、守備する兵士を突いて地に倒した。會はそのまま中に入り、帳(とばり)を巻き上げて、西向きに立ち、目をカっと見開き項王をにらみつけた。頭髪は逆立ち、まなじりはことごとく裂けていた。項王は刀のつかに手をかけ、片膝をついて身構えて言った。「おまえは何者だ。」と。張良が、「沛公の参乗の樊會という者です。」と言った。項王は、「壮士だな。(この男に)大杯の酒をくれてやれ。」と言った。そこで(従者が)大杯の酒を与えた。會は拝謝して立ち上がり、立ったまま飲みほした。項王が、「この男に豚の肩肉をくれてやれ。」と言った。そこで(従者が)一塊(ひとかたまり)の生の肩肉を与えた与えた。樊會は盾を地面の上に伏せておき、肩肉をその上にのせ、剣を抜いて、切ってそれを食った。




項王曰、「壮士。能復飲乎。」樊?曰、「臣死且不避。卮酒安足辞。夫秦王有虎狼之心。殺人如不能挙、刑人如恐不勝。天下皆叛之。懐王与諸将約曰、『先破秦入咸陽者王之。』今沛公先破秦入咸陽、毫毛不敢有所近。封閉宮室、還軍覇上、以待大王来。故遣将守関者、備他盗出入与非常也。労苦而功高如此。未有封侯之賞。而聴細説、欲誅有功之人。此亡秦之続耳。窃為大王不取也。」項王未有以応。曰、「坐。」樊會従良坐。坐須臾、沛公起如廁。因招樊?出。

 ↓《書き下し》

項王曰はく、「壮士なり。能く復た飲むか」と。樊會曰はく、「臣死すら且つ避けず。卮酒安(いづ)くんぞ辞するに足らん。夫れ秦王虎狼(こらう)の心有り。人を殺すこと挙ぐるに能はざるが如く、人を刑すること勝へざるを恐るるが如し。天下皆之に叛く。懐王諸将と約しく曰はく、『先に秦を破りて咸陽に入る者は之を王とせん』と。今沛公先に秦を破りて咸陽に入り、毫毛(がうまう)も敢(あ)へて近づくる所有らず。宮室を封閉し、還(かへ)りて覇上に軍し、以て大王の来たるを待てり。故(ことさら)に将を遣はして関を守らしめし者は、他の盗の出入と非常とに備へしなり。労苦して功高きこと此(かく)の如し。未だ封侯の賞有らず。而(しか)るに細説を聴きて、有功の人を誅(ちゆう)せんと欲す。此れ亡秦の続のみ。窃(ひそ)かに大王の為(ため)に取らざるなり」と。項王未だ以て応(こた)ふる有らず。曰はく、「坐せと」と。樊會良に従ひて坐す。坐すること須臾にして、沛公起ちて廁(かはや)に如く。因りて樊?を招きて出ず。

 ↓《現代語訳》

項王が、「壮士だな。まだ飲めるか。」と尋ねると、樊會が答えた、「私めは死ぬことでさえ避けませぬ。大杯の酒くらい、どうして断るに足るでしょう。いや、断るには足りません。そもそも、秦王には虎や狼のような残忍な心がありました。人を殺すこと、あまりに多くて数え上げることができないほどです。人に刑罰を加えること、し残しがないかと心配するほどでありました。そのため、天下の人は皆そむいたのです。懐王は諸将と約束して『先に秦を破って咸陽に入った者を王としよう』と言われた。今、沛公は真っ先に秦を破り咸陽に入りましたが、わずかのものも自分のものにしようとはしませんでした。秦の宮室を封印し、軍を覇上に返して、大王様(項王)のお出ましを待っていたです。わざわざ将兵を派遣して函谷関を守らせたは、盗賊の出入りと非常事態に備えてのことなのです。(沛公が)苦労し功績が大きいことはこのようですのに、まだ侯に封じるとの恩賞がありません。それどころか、(大王は)つまらぬ者の言うことを信じて、功ある人を殺そうとされる。これは滅びた秦と同じ事です。恐れながら、私は、大王様のなさり方には賛成しかねます。」と。項王は返答できなかった。(ただ、)「座れ。」と言った。樊會は張良の隣に座った。座って少しすると、沛公は立ち上がり廁(かわや)へ行った。そうして樊會を呼んで外へ出た。




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