枕草子「ふと心劣りとかするものは」  問題

 ふと心劣りとかするものは、男も女も、言葉の文字いやしう使ひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ。ただ文字一つに、 Aあやしう、あてにもいやしうもなるは、いかなるにかあらむ。さるは、かう思ふ人、ことにすぐれてもあらじかし。いづれをよしあしと知るにかは。されど、人をば知らじ、ただ心地にさおぼゆるなり。
 いやしきことも、わろきことも、さと知りながらことさらに言ひたるは、あしうもあらず。わがもてつけたるを、つつみなく言ひたるは、あさましきわざなり。また、 Bさもあるまじき老いたる人、男などの、わざとつくろひ、鄙びたるは、にくし。まさなきことも、 Cあやしきことも、大人なるは、まのもなく言ひたるを、若き人は、いみじう Dかたはらいたきことに消え入りたるこそ、さるべきことなれ。
 何事を言ひても、「そのことさせむとす」「言はむとす」「何とせむとす」といふ「と」文字を失ひて、ただ「言はむずる」「里へ出でむずる」など言へば、やがていとわろし。まいて、文に書いては言ふべきにもあらず。 E物語などこそ、あしう書きなしつれば、言ふかひなく、作り人さへいとほしけれ。「ひてつ車に」と言ひし人もありき。「求む」といふことを「みとむ」なんどは、みな言ふめり。

問1 Aあやしう、Cあやしきの文中での意味を、前後の文意から根拠を示して記しなさい。★★

問2 Bさもあるまじきを、指示語の指示内容が分かるように現代語訳しなさい。★★

問3 Dかたはらいたきの意味を、5・6字の言い切りの形で記しなさい。★

問4 E物語などこそ、あしう書きなしつれば、言ふかひなく、作り人さへいとほしけれの意味として最も適当なものを次から選びなさい。★★
    イ 物語などは、間違って書いてあるので、何の取り柄もなく、作者にまで軽蔑を感じることだ。
    ロ 物語などは、間違って書いてあると、どうしようもなく、作者までかわいそうになる。
    ハ 物語などは、間違って書くなら、つまらなくて、作者までいじらしくなる。
    ニ 物語などは、間違って書きすぎて、この上なく、作者がうっとうしくなる。
    ホ 物語などは、間違って書けば、言っても仕方がないほど、作者が知りたくなる。

問5 「枕草子」の作者名・ジャンル名・成立した時代・作者が仕えた主人の名(2字)を順に記しなさい。時代は、前・中・後期まで答えること。★


advanced Q. 次より本文の趣旨に合致するものを選びなさい。正答は1つとは限らない。ただし、正答の数を越えている場合その数分減点となります。
    イ 書き言葉は、とくに正しくしなければならない。
    ロ 上品な言葉遣いを心がけるべきである。
    ハ 表記と言語は次元を異にするものである。
    ニ 伝統を無視した言葉の使用はいけない。
    ホ 言語は歴史的に変化するものである。
    へ 時代を無視して言葉遣いの適否は決められない。
    ト 言葉遣いが年齢によって差があるのは当然だ。
    チ ぞんざいな言葉遣いは年長者にすべきでない。

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枕草子「ふと心劣りとかするものは」 解答(解説)

枕草子「ふと心劣りとかするものは」 現代語訳


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