源氏物語「紫の上の死 3/3」(御法)   問題

 次の文章は、紫の上が亡くなって悲しみにふける源氏を、かつて紫の上が養女として入内させた冷泉院の后の宮(秋好中宮)が弔問するくだりである。これを読んで、あとの問いに答えよ。

 冷泉院の后の宮よりも、あはれなる御消息絶えず、尽きせぬことども聞こえ給ひて、
  枯れ果つる野辺を @憂しとや亡き人の秋に心をとどめざりけむ
今なむことわり知られ侍りぬるとありけるを、ものおぼえぬ御心にも、うち返し、置きがたく見給ふ。言ふかひあり、をかしからむ方の慰めには、この宮ばかりこそおはしけれと、いささかのもの紛るるやうにおぼし続くるにも、涙のこぼるるを、袖のいとまなく、え書きやり給はず。
  A上りにし雲居ながらもかへりみよ我あき果てぬ常ならぬ世に
おし包み給ひても、とばかりうちながめておはす。

 すくよかにもおぼされず、我ながら、ことのほかにほれぼれしくおぼし知らるること多かる紛らはしに、女方にぞおはします。仏の御前に、人しげからずもてなして、のどやかに B行ひ給ふ。千年をももろともにとおぼししかど、限りある別れぞ、いとくちをしきわざなりける。今は、蓮の露もことごとに紛るまじく、のちの世をと、ひたみちにおぼし立つことたゆみなし。されど、 C人聞きをはばかり給ふなむ、あぢきなかりける

 御わざのことども、はかばかしく Dのたまひおきつることなかりければ、大将の君なむ、とりもちてつかうまつり給ひける。今日やとのみ(※)、わが身も心づかひせられ給ふ折多かるを、はかなくて積もりにけるも、夢の心地のみす。中宮なども、おぼし忘るる時の間なく、恋ひ聞こえ給ふ。(御法)

  (※) わびつつも昨日ばかりは過ぐしてき今日やわが身の限りなるらむ(「拾遺集」)

問1 本文中で次に該当する助動詞が使われている文節を抜き出しなさい。a・cは各1つ、bは2つとします。★★
  a. 体験回想の過去の意味を持ち已然形のもの。
  b. 自発の意味で使われているもの。
  c. 仮定・婉曲で使われているもの。

問2 @憂しと思うのはだれか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。★★
    ア 「冷泉院の后の宮」  イ 「亡き人」  ウ 「我」  エ 「仏」

問3 A上りにし雲居ながらもかへりみよ我あき果てぬ常ならぬ世にの歌で使われている修辞を2点あげて説明しなさい。★★

問4 B行ひ、Dのたまひおきの意味を言い切りの形にして5字以内で記しなさい。★

問5 C人聞きをはばかり給ふなむ、あぢきなかりけるとは、誰がどうすることをどうだといっているのか。文意に即して分かりやすく説明しなさい。★★★

問6 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★



advanced Q.1 枯れ果つる野辺は実景であると同時に、ほかにどういうことを象徴しているか。

advanced Q.2 今なむことわり知られ侍りぬるは、秋好中宮からの「御消息」である。「御消息」であることを、どの語がよく表しているか。該当する語を抜き出せ。

advanced Q.3 A上りにし雲居ながらもかへりみよ我あき果てぬ常ならぬ世にの「上りにし雲居」の解釈には二説ある。それはどういうものと考えられるか。



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源氏物語「紫の上の死 3/3」(御法)   exercise

 次の文章は、紫の上が亡くなって悲しみにふける源氏を、かつて紫の上が養女として入内させた冷泉院の后の宮(秋好中宮とも呼ばれる)が弔問するくだりである。これを読んで、あとの問いに答えよ。

 冷泉院の后の宮よりも、あはれなる御消息絶えず、尽きせぬことども聞こえ給ひて、
 「 @枯れ果つる野辺を憂しとや亡き人の秋に心をとどめざりけむ
A今なむことわり知られ侍りぬる。」とありけるを、ものおぼえぬ御心にも、うち返し、置きがたく見給ふ。言ふかひあり、をかしからむ方の慰めには、この宮ばかりこそおはしけれと、いささかのもの紛るるやうにおぼし続くるにも、涙のこぼるるを、袖のいとまなく、え書きやり給はず。
B上りにし雲居ながらもかへりみよ我あき果てぬ常ならぬ世に
おし包み給ひても、とばかりうちながめておはす。
 すくよかにもおぼされず、我ながら、ことのほかにほれぼれしくおぼし知らるること多かる紛らはしに、女方にぞおはします。仏の御前に、人しげからずもてなして、のどやかに行ひ給ふ。 C千年をももろともにとおぼししかど、限りある別れぞ、いとくちをしきわざなりける。今は、 D蓮の露もことごとに紛るまじく、のちの世をと、ひたみちにおぼし立つことたゆみなし。されど、 E人聞きをはばかり給ふなむ、あぢきなかりける
 御わざのことども、はかばかしくのたまひおきつることなかりければ、大将の君なむ、とりもちてつかうまつり給ひける。今日やとのみ、わが身も心づかひせられ給ふ折多かるを、はかなくて積もりにけるも、夢の心地のみす。中宮なども、おぼし忘れる時の間なく、恋ひ聞こえ給ふ。

問1 本文中で動詞の語の意図的な誤用が一か所ある。それはどの語か、正したものを記しなさい。

問2 本文中から次に該当する動詞の語を抜き出し、基本形にして記しなさい。
    a 「言う」の謙譲語          b 勤行するという意味の語
    c 「物思いにふける」という意味の語  d「指図する」という意味の尊敬語

問3 @について、次の問いに答えよ。
(1) 「枯れ果つる野辺」とは、季節の実景を表したものだが、ほかにどういうことを象徴しているか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
     ア 源氏や秋好中宮の悲しみの心      
     イ 悲しみは時とともに薄れるという道理
     ウ 盛りのままで人生を終えることの困難  
     エ ただ一人行かねばならない死出の道
     オ 人は死を逃れられないという宿命。

(2) 「憂し」と思うのは、だれか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
     ア 「冷泉院の后の宮」  イ 「亡き人」
     ウ 「我」        エ 「仏」    オ 「大将の君」

問4 Aについて、次の問いに答えよ。
   (1) この言葉は、秋好中宮からの「御消息」である。「御消息」であることを、どの語がよく表しているか。該当する語を一つ抜き出せ。
   (2) 「ことわり」とあるが、ここでは具体的にはどういう意味か。10字以上15字以内で記しなさい。 問5 Bの歌について、次の問いに答えよ。

   (1)「上りにし雲居」とは、紫の上が荼毘の煙となって空に立ち昇ってしまったことをさすとする説もあるが、返歌として秋好中宮のことについて表したものとする説もある。その場合、「雲居」とはどういう意味になるか。漢字二字で答えよ。
   (2)使われている修辞法について説明しなさい。

問6 Cについて、次の問いに答えよ。
   (1)「千年をももろともに」とあるが、次にどういう言葉が省略されているか。5字以内の文語で答えよ。
   (2)「限りある別れ」とあるが、どういう意味か。一語で答えよ。

問7 Dとは、ここではわかりやすく言うとどういうことか。

問8 Eについて、次の問いに答えよ。
   (1)「人聞きをはばかり給ふ」とあるが、どういう「人聞き」を「はばかり」なさるのか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
      ア 紫の上を失った悲しみのあまりに出家したと言われること。
      イ 紫の上のあとを追って死んだと言われること。
      ウ 紫の上を恋い慕って毎日泣き暮らしていると言われること。
      エ 紫の上の死後すぐに他の女性に心を寄せていると言われること。
      オ 紫の上の供養をぼんやりした気分のため失念しているといわれること。

   (2)「あぢきなかりける」とは、どういう意味か。口語訳せよ。
   (3)「なむ………ける」は、係り結びである。ほかにも本文中に五箇所係り結びが見られる。その結びの語を順に抜き出せ。

問9 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。



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