源氏は17歳、正妻の葵上は21歳。後に明らかにされるが、そのころ源氏は六条に住まっていた亡き東宮の御息所(「六条御息所」と呼ばれる)のもとに通っていた。一条天皇のころの京都は東の京の四条以北にのみ人家が密集しそれ以外は荒れていたというので、五条・六条はいわば京都周辺部と考えられる。
切懸だつ物に、いと青やかなる葛の心地よげに這ひかかれるに、白き花ぞ、おのれひとり @笑みの眉ひらけたる。「をちかた人にもの申す」と独りごちたまふを、 a御随身ついゐて、「かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。花の名は人めきて、かうあやしき垣根になん咲きはべりける」と申す。 Aげにいと小家がちに、むつかしげなる Bわたりの、この面かの面あやしくうちよろぼひて、むねむねしからぬ軒のつまなどに這ひまつはれたるを、「 C口惜しの花の契りや、一房折りてまゐれ」とのたまヘば、この押し上げたる門に入りて折る。 Dさすがにされたる遣戸口に、黄なる b生絹の c単袴長く着なしたる童のをかしげなる出で来てうち招く。白き扇のいたう dこがしたるを、「これに置きて〔 e 〕、枝も情なげなめる花を」とて取らせたれば、門あけて惟光朝臣出で来たるして奉らす。「鍵を置きまどはしはべりて、いと不便なるわざなりや。 Eもののあやめ見たまへ分くべき人もはべらぬわたりなれど、 fらうがはしき大路に立ちおはしまして」と gかしこまり申す。引き入れて下りたまふ。(夕顔)
問1 a御随身・b生絹・c単袴の読みを現代仮名遣いで記しなさい。★
問2 dこがし・fらうがはしき・gかしこまりの意味を基本形で記しなさい。★
問3 空欄eに「参らす」を適切な形にして記しなさい。★★
問4 @笑みの眉ひらけたる・Eもののあやめ見たまへ分くべき人の意味を文脈に即して現代語訳しなさい。★★★
問5 Aげに・Bわたりのはそれぞれどの文節にかかるか。★★
問6 C口惜しの花の契りやについて、
(1)現代語訳しなさい。★★
(2)そう思うのはなぜなのか、説明しなさい。★★★
問7 Dさすがにの内容を補って、その意味を記しなさい。★★★
問 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★
源氏物語「花のゆかり 2/2」(夕顔) 解答用紙(プリントアウト用) へ
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