枕草子「宮に初めて参りたるころ」2/3  問題

 次の文章は、中宮のそば近く伺候していた筆者が、先払いの声がしたので、関白道隆のお越しかと奥に退いたが、やはり気になり、几帳の陰からのぞき見をしている場面である。よく読んで問に答えなさい。

  大納言殿の参り給へるなりけり。御 a直衣、指貫の紫の色、雪に映えていみじうをかし。柱もとにゐ給ひて、「昨日今日、物忌みに侍りつれど、雪のいたく降り侍りつれば、おぼつかなさになむ。」と申し給ふ。「【  @  】と思ひつるに、いかで。」とぞ御いらへある。うち笑ひ給ひて、「【  A  】もや御覧ずるとて。」など bのたまふ御ありさまども、これより何事かはまさらむ。物語にいみじう口に任せて言ひたるに、たがはざめりとおぼゆ。
 宮は、白き c御衣どもに、紅の唐綾をぞ上に d奉りたる。 e御髪のかから f給へるなど、絵にかきたるをこそ、かかることは見しに、うつつにはまだ知らぬを、夢の心地ぞする。女房ともの言ひ、たはぶれごとなどし給ふ。御いらへを、いささかはづかしとも思ひたらず聞こえ返し、そらごとなどのたまふは、 gあらがひ論じなど聞こゆるは、目もあやに、あさましきまで、あいなう、おもてぞ赤むや。御くだもの h参りなど、とりはやして、御前にも参ら i給ふ。
 「御帳の後ろなるは、たれぞ。」と問ひ給ふなるべし。さかす jこそはあらめ、立ちておはするを、なほほかへ kやと思ふに、いと近うゐ給ひて、ものなどのたまふ。まだ参らざりしより聞き置き給ひけることなど、「まことにや、さありし。」などのたまふに、御几帳隔てて、 Bよそに見やり奉りつるだにはづかしかりつるにいとあさましう、さし向かひ聞こえたる心地、うつつともおぼえず、。行幸など見る折、 l車の方にいささかも見おこせ給へば、下簾ひきふたぎて、m透影もやと扇をさし隠すに、なほいとわが心ながらも、おほけなく、いかで立ち出でしにかと、汗あえていみじきには、何事をかはいらへも聞こえむ。

問1 文中で撥音便となっていて、その撥音が表記されていない語はどれか、本来の形にして記しなさい。★

問2 a直衣、c御衣、e御髪の読みを現代仮名遣いの平仮名で記しなさい。★

問3 bのたまふ、gあらがひ論じなど聞こゆる、l車の方にいささかも見おこせ給へ、m透影もやと扇をさし隠すの主語は次のどれか、記号で答えなさい。★★
    イ 帝  ロ 中宮  ハ 大納言  ニ 女房  ホ 女官  へ 筆者  ト 世間の人々

問4 d奉り、h参りは、それぞれどういう動作をいうのか。現代語で記しなさい。★

問5 f、i、j、kの文法的説明として適当なものをそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。★
    ア サ行変格活用動詞     イ 下二段活用動詞活用語尾   ウ 形容動詞活用語尾
    エ 断定(存在)の助動詞   オ 推定の助動詞        カ 四段活用動詞
    キ 尊敬の助動詞       ク 使役の助動詞

問6 第一段の対話には、「山里は雪降り積みて道もなし今日来む人をあはれとは見む」(『拾遺集』冬 平兼盛)という和歌がふまえられている。これを参考にして、空欄@Aにあてはまる語句をそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。★★
   ア 山里は  イ 雪降り積みて  ウ 道もなし  エ 今日来む人を  オ あはれと




問7 Bよそに見やり奉りつるだにはづかしかりつるにいとあさましう、さし向かひ聞こえたる心地、うつつともおぼえずについて、
   (1)「だに」の用法を文意に即して説明しなさい。★★★
   (2) 全体を現代語訳しなさい。★★★

問8 「枕草子」の作者名・ジャンル名・成立した時代・作者が仕えた主人の名(2字)を順に記しなさい。時代は、前・中・後期まで答えること。★






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