枕草子「二月つごもりころに」(百六段) 問題

  @二月つごもりごろに、風いたう吹きて、空いみじう黒きに、雪少しうち散りたるほど、黒戸に主殿寮来て、「かうて候ふ。」と言へば、寄りたるに、「これ、公任の宰相殿の。」とてあるを見れば、懐紙に、
    【  A  】心地こそすれ
とあるは、げに今日のけしきにいとよう合ひたるを、これが本は Bいかでかつくべからむと、思ひわづらひぬ。「たれたれか。」と問へば、「それそれ。」と言ふ。みないと Cはづかしき中に、宰相の御いらへを、いかでかことなしびに言ひ出でむと、心一つに苦しきを、 D御前に御覧ぜさせむとすれど、上のおはしまして大殿籠りたり。主殿寮は、「とく、とく。」と言ふ。げに、 Eおそうさへあらむは、いととりどころなければ、さはれとて、
  空寒み花にまがへて散る雪に
と、わななくわななく書きて取らせて、いかに思ふらむと、わびし。
 Fこれがことを聞かばやと思ふに、そしられたれば聞かじとおぼゆるを、「俊賢の宰相など、『なほ、内侍に奏してなさむ。』となむ、定め給ひし。」とばかりぞ、左兵衛督の、中将におはせし、語り給ひし。
   ※ 『白氏文集』に次の一節がある。「三時雲冷多飛雪、二月山寒少有春。」

問1 本文中の助動詞の語で、意図的な文法上の誤用がある。正したものを記しなさい。★★

問2 @二月の読み(異名)をひらがなで、Cはづかしきの意味を、D御前と言われている人の名を漢字二字で記しなさい。★

問3 Aの空欄にはどんな語句が補えるか、次から適当なものを選び記号で答えなさい。★★
    イ 水もこほれる  ロ 少し春ある  ハ 草木もしをるる  ニ 冬にぞもどる ホ 夏ぞこひしき

問4 Bいかでかつくべからむを品詞分解しなさい。★★

問5 Eおそうさへあらむの説明として次から適当なものを選びなさい。★
   イ 上手でも遅い  ロ 下手だが速い  ハ 上手な上に速い  ニ 下手な上に遅い

問6 Fこれがことを聞かばやを、「これがこと」の具体的内容が分かるようにして現代語訳しなさい。★★

問7 「枕草子」の作者名・ジャンル名・成立した時代を順に記しなさい。時代は、前・中・後期まで答えること。★


advanced Q.1 俊賢の宰相など、『なほ、内侍に奏してなさむ。』となむ、定め給ひしにおいて、俊賢の宰相などが、「なほ、内侍に奏してなさ む。」と言ったのは、なぜか。その理由を簡潔に説明せよ。

advanced Q.2 特に最後の段落(これがことを〜語り給ひし。)から、作者はどういう性格の持ち主だと推測されるか。10字以上15字以内、「…性格。」という言い方で説明しなさい。


枕草子「二月つごもりころに」 解答用紙(プリントアウト用)

枕草子「二月つごもりころに」 解答/解説

枕草子「二月つごもりころに」 現代語訳


枕草子「二月つごもりころに」(百六段) exercise

 a二月(      )ごろに、風いたう吹きて、空いみじう黒きに、雪少しうち散りたるほど、黒戸に c主殿司来て、「 かうて候ふd。」と言へば、寄りたるに、「これ、公任の宰相殿の。」とてあるを見れば、 e懐紙に、
  少し春ある心地こそすれ
とあるは、 @げに今日のけしきにいとよう合ひたるを、これが本はいかでかつくべからむと、思ひわづらひぬ。「たれたれか。」と問へば、「それそれ。」と言ふ。みないと fはづかしき中に、宰相の御いらへを、 gいかでかことなしびに言ひ出でむと、心一つに苦しきを、 h御前に御覧ぜさせむとすれど、上のおはしまして大殿籠りたり。主殿寮は、「とく、とく。」と言ふ。げに、 Aおそうさへあらむは、いととりどころなければ、さはれとて
  空寒み花にまがへて散る雪に
と、わななくわななく書きて取らせて、いかに思ふらむと、わびし。
 Bこれがことを聞かばやと思ふに、そしられたらば聞かじとおぼゆるを、「 C俊賢の宰相など、『なほ、内侍に奏してなさむ。』となむ、定め給ひし。」とばかりぞ、左兵衛督の、中将におはせし、語り給ひき。
※ 『白氏文集』に次の一節がある。「三時雲冷多飛雪、二月山寒少有春。」

問1 a「二月」、c「主殿司」、e「懐紙」のよみを現代仮名遣いのひらがなで記しなさい。aは異名の読みとする。

   空欄のに月の下旬と言う意味の語を記しなさい。

   f「はづかしき」の意味を五字以内で記しなさい。

   h「御前」と言われている人の名を漢字2字で記しなさい。

問2 d「かうて候ふ」、g「いかでかことなしびに」、の意味として適当なものを、それぞれ次の中から選び、記号で答えよ。
    d ア どうしているのですか。 イ 何かいたしましょう。  ウ お久しぶりです。
      エ ごめんください。    オ お寒くございます

    g ア いかにも平凡に     イ どうして平然として   ウ いやもう無難に
      エ どうかして上手に    オ なぜ楽々と

問3 本文中で意図的に一箇所,助動詞活用の誤用をしている。それはどれか、正したものを記しなさい。

問4 @ 「げに今日のけしきにいとよう合ひたるを、これが本はいかでかつくべからむ」について、次の問いに答えよ。
   (1)「げに今日のけしきにいとよう合ひたる」とあるが、どういう点で合っているのか。該当する箇所を本文中から抜き出し、初めと終わりの二字で答えよ。

   (2)「これが本」とあるが、その「本」に該当する部分を、本文中から抜き出せ。

問5 A「おそうさへあらむは、いととりどころなければ、さはれとて」について、次の問いに答えよ。
   (1)「おそうさへあらむは」の説明として適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
     ア 上手でも遅い   イ 下手だが速い  ウ 上手なうえに速い  エ 下手なうえに遅い>

   (2)「さはれとて」とあるが、「さはれ」とはどういう気持ちを表したものか。十字以上二十字以内で記しなさい。

問6 B「これがことを聞かばやと思ふに、そしられたらば聞かじとおぼゆる」について、
(1)「これがことを聞かばや」とあるが、「これがこと」とは具体的には何のことか。一〇字程度で答えよ。

(2)「聞かばや」、「聞かじ」とあるが、作者のどのような心情がうかがわれるか。適当なものをそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。
       ア 得意  イ 不安  ウ 失望  エ 期待  オ 悲嘆  カ 満足  キ 顰蹙

問7 C「俊賢の宰相など、『なほ、内侍に奏してなさむ。』となむ、定め給ひし。」において、俊賢の宰相などが、「なほ、内侍に奏してなさむ。」と言ったのは、なぜか。その理由を簡潔に説明せよ。

問8 この段から作者はどういう性格の持ち主だと推測されるか、特に最後の段落に着目して、10字以上15字以内、かつ、「…性格。」という言い方で説明しなさい。

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