「刑部卿敦兼と北の方/敦兼の北の方」(古今著聞集) 問題
刑部卿敦兼は、見目のよに憎さげなる人なりけり。その北の方ははなやかなる人なりけるが、五節を見侍りけるに、とりどりにはなやかなる人々のあるを見るにつけても、まづわが男の悪さ心うくおぼえけり。 家に帰りて、すべてものをだにもいはず、目をも見合わせず、うちそばむきてあれば、しばしはなにごとの出で来たるぞやと、心も得ず思ひゐたるに、次第に @厭ひまさりてかたはらいたきほどなり。さきざきのやうに一所にもゐず、方を変へて住み侍りけり。ある日、刑部卿出仕して、夜に入りて帰りたりけるに、出居に灯を【 A 】もともさず、装束は脱ぎたれども、たたむ人もなかりけり。女房どもも、みな御前の目びきに従ひて、さし出づる人もなかりければ、せむかたなくて、車寄せの妻戸を押し開けて、ひとりながめゐたるに、更たけ、夜静か Bにて、月の光風の音、物ごとに身にしみわたりて、人の恨めしさも取り添へておぼえけるままに、心を澄まして、篳篥を取り出でて、 aQ1時の音に取り澄まして、
Cませのうちなる白菊も
移ろふ見るこそあはれなれ
われらが通ひて見し人も
かくしつつこそかれにしか
と、繰り返し歌ひけるを、北の方聞きて、 aQ2心はや直りにけり。それより殊に仲らひめでたくなりにけるとかや。 D優なる北の方の心なるべし。
問1 @厭ひまさりてかたはらいたきほどなりとは、誰のどういう様子を言うものか簡潔に説明しなさい。★★★
問2 Aの空欄に文意が通るよう、文中から適当な副助詞を抜き出して記しなさい。★★
問3 Bにてを文法の観点から説明しなさい。★★
問4 Cの歌について、
1. この歌の形式名を記しなさい。★
2. 使われている修辞法を説明しなさい。★
3. どういう気持ちが詠まれているのか、18字以内で説明しなさい。★★
問5 D優なる北の方の心なるべしについて、ここでは「北の方」の何を「優なる」と評しているのか説明しなさい。★★★
advanced Q.1 aQ1時の音に取り澄ましてを分かりやすく解釈しなさい。
advanced Q.2 aQ2心はや直りにけりについて、そうなった理由を20字以内で説明しなさい。
「刑部卿敦兼と北の方」(古今著聞集) 解答用紙(プリントアウト用)
「刑部卿敦兼と北の方」(古今著聞集) 解答/解説
「刑部卿敦兼と北の方」(古今著聞集) 現代語訳
「刑部卿敦兼と北の方/敦兼の北の方」(古今著聞集) exercise
【標準】
a刑部卿敦兼は、見目のよに憎さげなる人なりけり。その北の方ははなやかなる人なりけるが、b五節を見侍りけるに、とりどりにはなやかなる人々のあるを見るにつけても、まづ @わが男の Aわろさ心うくおぼえけり。 家に帰りて、すべてものをだにもいはず、目をも見合わせず、 Bうちそばむきてあれば、しばしはなにごとの出で来たるぞやと、 C心も得ず思ひゐたるに、次第に厭ひまさりて Dかたはらいたきほどなり。さきざきのやうに一所にもゐず、 E方を変へて住み侍りけり。ある日、刑部卿出仕して、夜に入りて帰りたりけるに、出居に灯をだにもともさず、 c装束は脱ぎたれども、たたむ人もなかりけり。女房どもも、みな御前の目びきに従ひて、さし出づる人もなかりければ、せむかたなくて、車寄せの妻戸を押し開けて、ひとり Fながめゐたるに、更たけ、夜静かにて、月の光風の音、物ごとに身にしみわたりて、人の恨めしさも取り添へておぼえけるままに、心を澄まして、篳篥を取り出でて、時の音に取り澄まして、
ませのうちなる白菊も
移ろふ見るこそあはれなれ
われらが通ひて見し G人も
かくしつつこそかれにしか
と、繰り返し歌ひけるを、北の方聞きて、心はや直りにけり。それより殊に仲らひめでたくなりにけるとかや。H優なる北の方の心なるべし
問1 abcの漢字の読みを現代かな遣いで記しなさい。
問2 @Gはだれのことか、それぞれ文中の語で記しなさい。
問3 ADHの語句の意味を記しなさい。
問4 BCEFの主語をそれぞれ文中の語で記しなさい。
問5 この夫婦は結局どうなったのかが書かれている部分を、文中から抜き出して記しなさい。
【発展】
刑部卿敦兼は、見目のよに憎さげなる人なりけり。その北の方ははなやかなる人なりけるが、五節を見侍りけるに、とりどりにはなやかなる人々のあるを見るにつけても、まづわが男のわろさ @心うくおぼえけり。 家に帰りて、すべてものをだにもいはず、目をも見合わせず、うちそばむきてあれば、しばしはなにごとの出で来たるぞやと、心も得ず思ひゐたるに、次第に厭ひまさりて Aかたはらいたきほどなり。さきざきのやうに一所にもゐず、方を変へて住み侍りけり。ある日、刑部卿出仕して、夜に入りて帰りたりけるに、出居に灯をだにもともさず、装束は脱ぎたれども、たたむ人もなかりけり。女房どもも、みな御前の目びきに従ひて、さし出づる人もなかりければ、せむかたなくて、車寄せの妻戸を押し開けて、ひとりながめゐたるに、更たけ、夜静かにて、月の光風の音、物ごとに身にしみわたりて、 B人の恨めしさも取り添へておぼえけるままに、心を澄まして、篳篥を取り出でて、 C時の音に取り澄まして、
ませのうちなる白菊も
移ろふ見るこそあはれなれ
われらが通ひて見し人も
かくしつつこそ Dかれにしか
と、繰り返し歌ひけるを、北の方聞きて、 E心はや直りにけり。それより殊に仲らひめでたくなりにけるとかや。優なる北の方の心なるべし。
問1 @のようになったきっかけを、分かりやすく説明しなさい。
問2 Aはどのような状態を言うのか、具体的に記しなさい。
問3 Bは誰がどのような様子であることを言うのか、具体的に記しなさい。
問4 Cは誰がどうしたのか、分かりやすく説明しなさい。
問5 Dに掛けられている語を、「置き・起き」のように漢字とひらがなを用いて記しなさい。
問6 Eのようになった理由を20字以内で説明しなさい。
問7 本文中に出てくる歌について、
(1)何という種類のものか。
(2)どのような内容か簡潔に記しなさい。
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