蜻蛉日記「ゆする杯の水」 問題

 日頃兼家の訪問は途絶えがちで、作者は悶々として過ごす日が多かった。しかし、この日は違った。久しぶりに訪れて、昼間も滞在したのであったが…。次の本文を読んで後の問いに答えなさい。

 心のどかに暮らす日、はかなきこと言ひ言ひの果てに、我も @もあしう言ひなりて、うち怨じて出づるになりぬ。端の方に歩み出でて、をさなき Aを呼び出でて、「我は今は来じとす。」など言ひ置きて、 B出でにけるすなはち、はひ入りて、おどろおどろしう泣く。「こはなぞ、こはなぞ。」と言へど、いらへもせで、論なう、さやうにぞあらむと、おしはからるれど、 Cの聞かむもうたてものぐるほしければ、問ひさして、とかうこしらへてあるに、五、六日ばかりになりぬるに、音もせず。例ならぬほどになりぬれば、あなものぐるほし、たはぶれごととこそ我は思ひしか、【  D  】仲なれば、かくて Eやむやうもありなむかしと思へば、心細うてながむるほどに、出でし日使ひしゆする坏の水は、さながらありけり。上に塵ゐてあり。かくまでと、あさましう、
  絶えぬるか影だにあらば問ふべきをかたみの水は水草ゐにけり
など思ひし日しも、見えたり。例のごとにてやみにけり。 Fかやうに胸つぶらはしき折のみあるが、よに心ゆるびなきなむ、わびしかりける。

問1 @ACの「」は、だれをさすか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。
     ア 藤原兼家  イ 藤原道綱  ウ 藤原道長  エ 作者の家の侍女  オ 世間の人  カ 作者★★

問2 B出でにけるすなはちについて
    1.「出でにける」の主語は誰か、問1の記号で答えなさい。★★
    2.「すなはち」の意味を4字で記しなさい。★

問3 Dの空欄に文意が通るよう、文中から形容詞の語を抜き出し適当な形にして記しなさい。★★

問4 Eやむやうもありなむかしについて、
    1.「やむ」と同じ意味を表している動詞を本文中から抜き出し、終止形で答えよ。★★
    2.「なむかし」を文法の観点から説明しなさい。★★

問5 Fかやうに胸つぶらはしき折のみあるが、よに心ゆるびなきなむ、わびしかりける。で作者の心境・心情を表す形容詞が三つあるが、それはどれか。それぞれの終止形・ここでの活用形の名・意味を順に記しなさい。。★★

問6 「蜻蛉日記」の成立した時代、作者の名、作者の姪にあたる菅原孝標女が書いた日記作品の名を順に記しなさい。★

advanced Q.1 B出でにけるすなはちで、出て行ったときの状況を作者は見ていないが、そうだとわかるのはなぜだといえるか。

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蜻蛉日記「ゆする杯の水」 exercise

 日頃兼家の訪問は途絶えがちで、作者は悶々として過ごす日が多かった。しかし、この日は違った。久しぶりに訪れて、昼間も滞在したのであったが…。次の本文を読んで後の問いに答えなさい。

 心のどかに暮らす日、はかなきこと言ひ言ひの果てに、我も aもあしう言ひなりて、うち怨じて出づるになりぬ。端の方に歩み出でて、をさなき bを呼び出でて、「我は @今は来じとす。」など言ひ置きて、A出でにけるすなはち、はひ入りて、おどろおどろしう泣く。「こはなぞ、こはなぞ。」と言へど、いらへもせで、 c論なう、さやうにぞあらむと、おしはからるれど、 dの聞かむも eうたてものぐるほしければ、問ひさして、とかう fこしらへてあるに、五、六日ばかりになりぬるに、音もせず。例ならぬほどになりぬれば、あなものぐるほし、たはぶれごととこそ我は思ひしか、(  B  )む仲なれば、かくて Cやむやうもありなむかしと思へば、心細うて gながむるほどに、出でし日使ひしゆする坏の水は、さながらありけり。上に塵ゐてあり。Dかくまでと、 hあさましう
   E絶えぬるか影だにあらば問ふべきをかたみの水は水草ゐにけり
など思ひし日しも、見えたり。例のごとにてやみにけり。かやうに胸つぶらはしき折のみあるが、よに心ゆるびなきなむ、わびしかりける。

問1(1)文中で使われている自発の助動詞はどれか、それが使われている文節を抜き出し、かつ、ここでの活用形の名を記しなさい。

  (2)文中で使われているサ行変格活用の動詞の複合語はどれか。その基本形・文中での活用形の名を順に記しなさい。

問2 a・b・dの「」は、だれをさすか。適当なものを次の中から選び、記号で答えよ。

    ア 藤原兼家  イ 藤原道綱  ウ 藤原道長  エ 作者の家の侍女  オ 世間の人

問3 c・e・f・g・hの意味として適当なものをそれぞれ次の中から選び、記号で答えよ。

   c…ア 議論せずに    イ どうせ      ウ 根拠なく    エ むちゃくちゃに
   e…ア いやで      イ 困って      ウ 恐れて     エ 心配して
   f…ア 作り上げる    イ 堪える      ウ だます     エ なだめる
   g…ア じっと見つめる  イ もの思いをする  ウ しくしく泣く  エ のんびりとする
   h…ア うれしくて    イ 怒って      ウ あきれて    エ 気の毒に思って

問4 @「今は来じとす」を現代語訳しなさい。

問5 A「出でにけるすなはち、はひ入りて」について、次の問いに答えよ。

   (1)「すなはち」とあるが、副詞「すなはち」はどういう意味か。四字以内で答えよ。

   (2)「出でにける」とあるが、出て行ったときの状況を作者は見ていない。そのことがわかる一語を、傍線部@の中から抜き出せ。

   (3)「はひ入りて」とあるが、その主語はだれか。本文中から抜き出せ。

問6 空欄のBに文意が通るよう、文中で使われている形容詞の語を抜き出し適当な形にして記しなさい。

問7 C「やむやうもありなむかし」について、

   (1)「やむ」と同じ意味を表している動詞を本文中から抜き出し、終止形で答えよ。

   (2)現代語訳しなさい。

問8 D「かくまで」の「かく」とは具体的にはどういうことか説明しなさい。

問9 E「絶えぬるか影だにあらば問ふべきをかたみの水は水草ゐにけり」について、

   (1)何句切れの歌か。

   (2)「影だにあらば問ふべきを」を現代語訳しなさい。

問10 「蜻蛉日記」の成立した時代・作者の呼び名・作者の姪にあたり「更級日記」の作者とされる人の呼び名を順に記しなさい。

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