伊勢物語「筒井筒」（第二十三段）　問題

　昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女を（　ａ　）得めと思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞か（　ｂ　）なむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
　　 筒井筒井筒にかけしまろが丈過ぎにけらしな妹見ざるまに
女、返し、
　　 �T　くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき
など言ひ言ひて、つひに　�@本意のごとくあひにけり。
　さて、年ごろ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、　�Aもろともに言ふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に、行き通ふ所出で来にけり。さりけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、男、異心ありてかかるにやあらむと、思ひ疑ひて、ｃ前栽の中に隠れゐて、河内へいぬ　ｄる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、うちながめて、
　　 �U　風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
とよみけるを聞きて、Ａ限りなくかなしと思ひて、河内へも行かず　ｅなりにけり。
　まれまれかの高安に来てみれば、初めこそ　ｆ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づからいひがひ取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、心うがりて行かずなりにけり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
　　 君があたり見つつををらむ生駒山　�B雲な隠しそ雨は降るとも
と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
　　 　君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る
と言ひけれど、Ｂ男住まずなりにけり。

問１　ａ の空欄には適当な係助詞を、ｂ の空欄には適当な接続助詞を記しなさい。

問２　（１）ｃ「前栽」の読みを現代仮名遣いで記しなさい。（２）　その意味を５〜１０字で記しなさい。

問３　ｄ 「る」を文法的に簡潔に説明しなさい。

問４　ｅなりを文法的に説明しなさい。また、ｆ 「心にくく」の意味を言い切りの形で記しなさい。

問５　�@「本意のごとくあひにけり」の「本意」とは具体的にはどういうことか、文意に沿って３０字前後で説明しなさい。

問６　�A「もろともに言ふかひなくてあらむやは」、および、�B「雲な隠しそ」を口語訳しなさい。

問７　�T歌「くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき」について、
　　（１）　この歌はある儀式が題材にされているが、その儀式の名を答えなさい。
　　（２）　この歌はどういう意思表示なのか、文意に即して簡潔に説明しなさい。

問８　�U歌「風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ」ついて、
　　（１）　使われている修辞を説明しなさい。
　　（２）　詠まれている心情は次のどれが一番近いか。【　猜疑　怨嗟　恋慕　嫉妬　不安　】


advanced Q.　Ａ「限りなくかなしと思ひて」、および、Ｂ「男住まずなりにけり」について、その理由になることをそれぞれ説明しなさい。

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伊勢物語「筒井筒」（第二十三段）　exercise

　昔、　�@田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得（　ａ　）と思ふ。女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
　　筒井筒井筒にかけしまろが丈　�A過ぎにけらしな妹見ざるまに
女、返し、
　　くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき
など言ひ言ひて、つひに　�B本意のごとくあひにけり。

　さて、　ｃ年ごろ　ｂ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、　�Cもろともに言ふかひなくてあらむやはとて、河内の国高安の郡に、行き通ふ所出で来にけり。さりけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、男、　ｄ異心ありてかかるにやあらむと、思ひ疑ひて、　ｅ前栽の中に隠れゐて、河内へ　�Dいぬる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、うちながめて、
　　風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
とよみけるを聞きて、　�T限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。

　まれまれかの高安に来てみれば、初めこそ　ｆ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づからいひがひ取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、　ｇ心うがりて行かずなり（　ｈ　）けり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
　　君があたり見つつををらむ生駒山　�E雲な隠しそ雨は降るとも
と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
　　君来むと言ひ（　ｉ　）夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る
と言ひけれど、　�U男住まずなりにけり。

問１　「伊勢物語」について、成立した時代、ジャンルの名、主人公のモデルとされている歌人の名を順に答えなさい。時代は前中後期まで答えること。

問２　文中から、ナ行変格活用の動詞、サ行変格活用の複合動詞を抜き出し、その基本形と文中での活用の名を順に記しなさい。

問３　空欄のａｈｉに次の助動詞（終止形で記してある）から選んで、適当に活用させたものとその文法上の意味を順に記しなさい。

　　　　　らる　　ぬ　　む　　まじ　　き　　む　　けむ

問４　ｂｅの読みを記しなさい。

問５　ｃｄｆｇの意味を答えなさい。ただし、５字以内で記すこと。

問６　�@〜�Eを口語訳しなさい。

問７　傍線部�Tと�Uについて、「男」がそうなった理由を説明しなさい。

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