昔、水無瀬に通ひ給ひし惟喬の親王、例の狩りしにおはします供に、右馬頭なる翁つかうまつれり。日ごろ経て、宮に帰り給うけり。御送りして、とくいなむと思ふに、 A大御酒給ひ、禄給はむとて、つかはさざりけり。この右馬頭、心もとながりて、
B枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくに
とよみける。時は弥生のつごもりなりけり。親王、大殿籠らで明かし給うてけり。かくしつつ、まうでつかうまつりけるを、 C思ひのほかに、御髪下ろし給うてけり。睦月に拝み奉らむとて、小野にまうでたるに、比叡の山のふもとなれば、雪いと高し。強ひて御室にまうでて拝み奉るに、つれづれと、いともの悲しくておはしましければ、やや久しく候ひて、いにしへのことなど思ひ出で D聞こえけり。 Eさても候ひてしがなと思へど、おほやけごとどもありければ、え候はで、夕暮れに帰るとて、
F忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとは
とてなむ、泣く泣く来にける。
問1 A大御酒の読みを現代仮名遣いで記しなさい。
問2 B枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくにの歌は、端的に言うとどんな気持ちが表現されているのか、地の文から適当な箇所を抜き出し、かつ、それを現代語訳しなさい。
問3 C思ひのほかに、御髪下ろし給うてけりについて、
@思ひのほかにとあるが、何が期待されていたのか説明しなさい。
A御髪下ろしとは、何をすることか、漢字2字で記しなさい。
問4 D聞こえの敬語の用法について説明した次の文章に適当な語句を記しなさい。
基本形は( a )で、( b )の( c )語である。現代語の( d )となる。ここでは、( e )から( f )へ敬意を表すこととなる。
問5 Eさても候ひてしがなを現代語訳しなさい。
問6 F忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとはを通常(正格)の散文の順序にするとすればどうなるか、記号で答えなさい。
イ 忘れては ロ 夢かとぞ思ふ ハ 思ひきや ニ 雪踏み分けて ホ 君を見むとは
advanced Q.1 B枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくにの歌の意向を、「惟喬の親王」は真逆に理解したと思われる節がある。それなら、「親王」はこの歌をどのように理解したと思われるか説明しなさい。
advanced Q.2 この話の前半には、歌の背景を示すとともに、後半への暗転を効果づける一文がある。その一文を抜き出し、初めの四字で答えよ。また、その根拠となることを解説しなさい。
昔、水無瀬に通ひ給ひし惟喬の親王、 a例の狩りしにおはします供に、 b右馬頭なる翁つかうまつれり。日ごろ経て、宮に帰り給うけり。御送りして、 @とくいなむと思ふに、 c大御酒給ひ、禄給はむとて、つかはさざりけり。この右馬頭、心もとながりて、
A枕とて草ひき結ぶこともせじ秋の夜とだに頼まれなくに
とよみける。時は d弥生の eつごもりなりけり。親王、 f大殿籠らで明かし給うてけり。かくしつつ、まうでつかうまつりけるを、 B思ひのほかに、御髪下ろし給うてけり。 g睦月に拝み奉らむとて、小野にまうでたるに、比叡の山のふもとなれば、雪いと高し。強ひて御室にまうでて拝み C奉るに、つれづれと、いともの悲しくておはしましければ、やや久しく候ひて、いにしへのことなど思ひ出で聞こえけり。さても候ひてしがなと思へど、おほやけごとどもありければ、 Dえ候はで、夕暮れに帰るとて、
E忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏み分けて君を見むとは
とてなむ、泣く泣く来にける。
問1 aがかかる文節を記しなさい
bは『伊勢物語』の主人公に擬せられている人物である。その名前を漢字で記せ。
cdgの漢字の読みを現代かなづかいのひらがなで記しなさい。
efの意味を答えなさい。活用語は基本形で答えること。
問2 @について、次の問いに答えよ。
1 「とくいなむ」とあるが、この心情と対照的な表現が話の後半に見られる。該当する表現を一〇字以内で抜き出し、かつ、その口語訳を順に記しなさい。
2「とくいなむ」の主語と同じ主語を持つものを、次の中から選び、記号で答えよ。
イ つかはさざりけり ロ 小野にまうでたる
ハ いともの悲しくておはしましけれ ニ 思ひ出で聞こえけり
Aの歌の意向を「惟喬の親王」は真逆に理解したと思われる節がある。そうであるなら、「親王」はこの歌をどのように理解したことになるか説明せよ。
Bについて、次の問いに答えよ。
1 「思ひのほかに」とあるが、この叙述は右馬頭の翁の心情ととってもよいと思われる。右馬頭は何を期待していたのに、それがはずれたというのか。簡潔に説明せよ。
2 「御髪おろし」とあるが、どうすることか。漢字二字で答えよ。
Cの敬語の用法を、文意に即して説明しなさい。
Dを口語訳しなさい。
Eとは誰のどういう現実を「忘れて」と言うものか、25〜30字で記しなさい。
問3 この話の前半には、歌の背景を示すとともに、後半への暗転を効果づける一文がある。その一文を抜き出し、初めの四字で答えよ。
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