光源氏は17歳。後に明らかにされるが、そのころ源氏は六条に住まっていた亡き東宮の御息所(「六条御息所」と呼ばれる)のもとに通っていた。その途中にある、病を得ている乳母の家を見舞っていたころ、隣家の女主人らしい女性からから扇が送られていき。源氏はその女性に興味を持つ。
やがて供人の惟光の手引きで源氏はその女性のもとに通うことになったが、女は素性を明かさないので、源氏も身分を隠したままであった。この女を「夕顔」と呼び習わしている。
これを読んで後の問いに答えよ。
A 八月十五夜、隈なき月影、隙多かる板屋残りなく漏り来て、見ならいたまはぬ住まひのさまもめづらしきに、 a暁近くなりにけるなるべし、隣の家々、 bあやしき c賤の男の声々、目覚まして、「あはれ、いと寒しや」、「今年 @こそなりはひにも頼むところすくなく、田舎の通ひも思ひかけねば、いと心細けれ。北殿 Aこそ、聞きたまふや」など言ひかはすも聞こゆ。いとあはれなるおのがじしの営みに、起き出でてそそめき騒ぐもほどなきを、女いと恥づかしく思ひたり。 d艶だち e気色ばまむ人は、消えも入りぬべき住まひのさまなめりかし。されど、のどかに、つらきもうきもかたはらいたきことも思ひ入れたるさまならで、わがもてなしありさまは、いとあてはかに児めかしくて、またなくらうがはしき隣の用意なさを、いかなることとも聞き知りたるさまならねば、なかなか恥ぢかかやかんよりは f罪ゆるされてぞ見えける。ごほごほと鳴神よりもおどろおどろしく、踏みとどろかす唐臼の昔も枕上とおぼゆる、あな耳かしがましとこれにぞ思さるる。何の響きとも聞き入れたまはず、いと gあやしうめざましき音なひとのみ聞きたまふ。くだくだしきことのみ多かり。
白桍の衣うつ砧の音も、かすかに、こなたかなた聞きわたされ、空とぶ雁の声とり集めて B忍びがたきこと多かり。端近き御座所なりければ、遣戸を引き開けて、もろともに見出だしたまふ。ほどなき庭に、されたる呉竹、 C前栽の露はなほかかる所も同じごときらめきたり。虫の声々乱りがはしく、壁の中のきりぎりすだに間遠に聞きならひたまへる御耳に、さし当てたるやうに鳴き乱るるを、なかなかさま変へて思さるるも、御心ざしひとつの浅からぬに、よろづの罪ゆるさるるなめりかし。
問1 a暁・bあやしき・d艶だち・e気色ばまむ・f罪・gあやしうの意味(活用語は言い切りの形で)とc賤の読みを記しなさい。★
問2 @とAの「こそ」の結びを記し、それぞれの用法を文法の観点から説明しなさい。★★
問3 B忍びがたきこととは、具体的にはどういう気持ちか説明しなさい。★★★
問4 C前栽のよみと意味を順に記しなさい。★★
B 白き袷、薄色のなよよかなるを重ねて、 @はなやかならぬ姿いとらうたげに Aあえかなる心地して、そこととりたててすぐれたることもなけれど、細やかにたをたをとして、ものうち言ひたるけはひあな a心苦しと、ただいとらうたく見ゆ。 B心ばみたる方をすこし添へたらばと見たまひながら、なほうちとけて見まほしく思さるれば、「いざ、ただこのわたり近き所に、心やすくて明かさむ。 Cかくてのみはいと苦しかりけり」とのたまへば、「いかでか。にはかならん」といとおいらかに言ひてゐたり。bこの世のみならぬ契りなどまで D頼めたまふに、うちとくる心ばへなどあやしく様変りて、 c世馴れたる人ともおぼえねば、人の思はむところもえ憚りたまはで、右近を召し出でて、随身を召させたまひて、御車ひき入れさせたまふ。このある人々も、かかる御心ざしのおろかならぬを見知れば、 dおぼめかしながら E頼みかけ聞こえたり。
問1 a心苦し・bこの世・c世・dおぼめかしの意味を記しなさい。★
問2 @はなやかならぬの述語の文節をぬきだしなさい。★★
問3 Aあえかなる心地して・B心ばみたる方を口語訳しなさい。★★
問4 Cかくの指示内容を15字以内で記しなさい。★★★
問5 DとEの語の意味と文法的相違が分かるように説明しなさい。★★★
問6 Bの本文を前後二段落に区切ると、(1)後の段落の初めの五文字を記し、(2)前段落の要旨を80字以内でまとめなさい。★★★
問7 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★
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