漢文とは何?

 漢文とは、漢人、つまり東アジア大陸に住むいわゆる「中国」人が古代から使ってきた文語体(★)の文章をいいます。日常会話の言語とは異なる、独特な文章です。公文書や記録や詩文などで使用されました。言うまでもないでしょうが、中国人は表記文字として漢字を用いるので漢字だけで書かれています。ここで言う中国人とは、110年ほど前まで存在した代以前の中国人(満州族・漢族・蒙古族、その他遊牧、農耕、漁労の多数の民族からなる大陸の人たち)をいいます。代も日常会話とは異なる文語として利用されるものでした。
 広大な東アジア大陸(の中国〉では方言の差が大きく、なかには異なる言語と言っていいほど差があるようです。しかし、漢字は基本的に表意文字なので、例えば「drink」という意味の語は、方言でどう発音されているかにかかわらず、「飲」という文字で表せばコミュニ―ケートできるわけです(ということは、「飲」をそれぞれの方言の発音で読んでいいわけです)。こうしたことがあり、漢字は共通のコミュニケーションの手段として便利でした。これもまた言うまでもないことですが、文字を理解し使用できるのは、役人や文人などごく一部の人たちで、また、文語としての漢文を理解できるのもそのようなごくごく一部の人たちでした。

(★)文語体とは、例えば日本語では、次の刑法にあるような、ある種の文章において、特有の用語を用いたり独特の言い回しをするものを考えると理解できるでしょう。『刑法』第230条 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」。言文一致とされる現代でも、文章では口頭語(話し言葉)とはちょっと違った言い方をしていますよね。

 中華文明を取り入れた朝鮮半島・ベトナム・日本でも漢文は公式の文書に用いたり、教養として学ばれてきました。
 わが国日本には、漢文は漢字とともにその表現方法として遅くとも四世紀には伝わったとされています。教養のひとつとして、漢文を読むことが盛んになされましたが、そのような環境において、漢文の語彙・文法を頭に入れ、それによって書いた文章も漢文の一種になります。ただ、『日本書紀』のように和語も混ざっているので和様漢文と呼ばれます。そして、漢字を利用してかなが発明され、漢字とかなを用いて「和漢混交文」が工夫されたため、次第に自由に日本語を文字表記できるようになっていきました(それについての事情を「かぐや姫の生い立ち/竹取物語〜日本で最も古い物語」で説明していますので、参照してください。こちらです)。
 漢文に日本語でいう助詞や送り仮名を付し、さらに順序が日本語らしくなるよう記号(返り点)をつけて日本語として読めるような工夫(漢文訓読)がなされるようになりまた。書き下し文読み下し文訓読文などというのがこれであり、漢文独特の言い回しとしてなじみがあり、漢文の特徴のひとつといってよい。

 我が国は、漢文を通して中華(中国)の制度・思想・文化から多くの影響を受けてきました。また、漢語の熟語漢文訓読的な言い回しなどから、日本語表現も大きな影響を受けてきました。
 一方、近代(朝末期)になると、中華(中国)は近代化を進めるため、文化先進国日本に大勢の留学生を送り込みました。そういう経緯から日本語経由で西欧文明を吸収することとなり、(★)和製漢語(=日本語)や日本語的言い回しを輸入することになり、さらに、和製漢語に起源をもつ語を使用するようになったりして、文化的関係が逆転することになったということも知っていていいでしょう。たとえば、「中華」は本来の漢語、「人民」は和製漢語(=日本語)、「共和国」も和製漢語(=日本語)であり、現代の中国は和漢混交の「中華人民共和国」を国名としていることが分かりやすい例です。中華(中国)の近代化は日本化であったと言う学者(たとえば、岡田英弘「シナ(チャイナ)とは何か」ー岡田英弘著作集第4巻。イデオロギーに囚われない優れた歴史研究者の一人。岡田の弟子であり妻の宮脇淳子も岡田の学説・歴史観にもとづいた多くの本を出版しています。)もいます。

(★)ここでの「和製漢語」とは、ヨーロッパ語のたとえば英語では、社会や国家を構成する人々を people とか、君主を持たない政体を republic というが、該当する日本語がないので、漢字を使ってそれぞれ「人民」、「共和国」という漢語で表すようにした語のことで、本来の漢語(中国語)熟語ではなく日本語熟語です。欧米語の翻訳のため作られた和製漢語一覧はこちらへ。

 漢文を学習するには、まず『漢文の組み立て(語順)』などの基礎知識をinputしましょう。こちらです


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