1高度情報社会、脱工業化社会
2だが、わたしはここで
情報の本質とは[ イ ]であり、[ イ ]は[ ロ ]を生みだす。[ ロ ]によって[ ハ ]の増殖が可能になる。[ ハ ]の増殖とは[ ニ ]の目的である。したがって[ ホ ]は、[ ニ ]の変質ではなく、[ ニ ]の基本原理があらわになった現象である。
【語群】 …1 資本主義 2 情報の商品化 3 利潤 4 差異 5 資本
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高度情報社会、脱工業化社会、 Aポスト産業資本主義――それをどのように呼ぼうと大差はない。 @資本主義がその様相を急激に変貌させているという事実が、いやおうなしにわれわれの目を引くのである。すなわち、aセンイや鉄鋼、さらには化学製品や機械といった A「蹴とばせば足が痛い」モノを生産する産業から、技術や通信、さらには広告や教育といった「情報」そのものを商品化する産業へと、資本主義の中心が移動しつつあるのである。
( B )、わたしはここで、あらゆるメディアが喧伝している「情報の商品化」という現象そのものについて語ろうと思っているのではない。( C )わたしは、すぐれて現代的なこの現象のなかに、ノアの bコウズイ以前から存在していた資本主義という経済機構の秘密を聞きとろうというのである。( D )、それがどういうことであるかを述べるためには、昔 cナツかしい『アリババと四十人の盗賊』の物語のなかのあの
dカシコく美しい女奴隷 Bマルジャーナの知恵を借りるのがいちばんの近道である。
【 中略 】
dカシコく美しい女奴隷マルジャーナ――かの女こそ C「情報」とはいったい何であるかを理解した最初の人間であったのである。
情報とは、それに使われている物理的な素材でもなければ、それが表現されている形式的な記号でもない。事実、最初の盗賊は白いチョークで印をつけさえすればアリババの家にかんする情報が伝えられると考えて、自分の首を失うことになった。二番目の盗賊は白い印のかわりに赤いペンキで印さえつければ同じ情報が伝えられると考えて、やはり自分の首を失うことになってしまった。
白いチョークの印がアリババの家のありかを示す情報として役にたつためには、ほかのすべての家の eトビラに白い印がついていないことが必要なのである。赤いペンキの印がアリババの家のありかを示す情報になるためには、ほかのすべての家の門口に赤い印がついていないことが必要なのである。ほかとの違い、( E )「差異」こそ、賢く美しいマルジャーナが発見した情報の本質なのである。
情報の商品化――それは、したがって、差異の商品化と言いかえることができることになる。( F )、差異そのものを売ることによって利潤を得る――それが、現代の資本主義の中心原理として fキノウしているのである。
ところで、資本主義とは、資本の無限の増殖を目的としている経済機構にほかならない。資本の増殖のためには利潤が必要である。そして、利潤とはつねに差異から生まれる。( G )、安く買って高く売ることこそ利潤を生みだす唯一の方法であり、それは、gサギや強奪といった手段に訴えないかぎり、二つの異なった価値体系のあいだの差異を hバイカイすることによってしか可能ではないからである。
差異から利潤を創りだす――これが、資本主義の基本原理である。だが同時に、この原理は、いままでの資本主義においては、あるいは外部的な関係として、あるいは D隠された構造としてしか作用してこなかった。たとえば、資本主義のもっとも古い形態である商業資本主義とは、海を iヘダてた遠隔地との交易を媒介して、国内市場の価格との差異から利潤を生みだしてきた。また、産業革命以降の資本主義の支配的な形態であった産業資本主義は、いまだ資本主義化していない農村における過剰人口の存在によって構造的に創りだされた、労働力の価値(実質賃金率)と労働の生産物の価値(労働生産性)とのあいだの差異から利潤を生みだしてきた。
( H )、遠隔地も農村の過剰人口も失いつつある現代の資本主義は、もはや E商業資本主義的な差異からも産業資本主義的な差異からも利潤を生みだすことが困難になってしまっている。資本主義が資本主義であり続けるためには、いまや F差異そのものを意識的に創りだしていかなければならないのである。そして、それが、情報の商品化を機軸として、われわれの目の前で進行しつつある高度情報社会、脱工業化社会、あるいはポスト産業資本主義と呼ばれる事態にほかならない。
情報の商品化――それは、まさに差異が利潤を創りだすという資本主義の基本原理そのものを jタイゲンしている現象である。いわば Gそれは、もはやだれも聞きのがしようのない、資本主義の秘密にかんする「開け、胡麻」であるのである。
問1 a〜jのカタカナ部を漢字で記しなさい。
問2 Aとほぼ同じ意味で用いられている漢字一字を、本文中から抜き出しなさい。
空欄のBCDEにあてはまる最も適当な語を次から選び、それぞれ記号で答えなさい。
イ すなわち ロ だが ハ あるいは ニ そして ヘ 逆に
空欄のFGHにあてはまる最も適当な語を次から選び、それぞれ記号で答えなさい。
イ だから ロ なぜならば ハ すなわち ニ だが
問3 @とは具体的にはどのようなことか。本文中のことばを用いて、六〇字以内で説明しなさい。
Aの例として最もふさわしくないものを次から選び、記号で答えなさい。
イ ミネラルウォーター ロ 携帯電話 ハ ビニール
ニ パーソナル・コンピュータ ホ インターネット検索サービス ヘ DVD
Bとは結局どのようなことか、二〇字以内で説明しなさい。
Cの答えが端的に述べられている一文を本文中から抜き出し、初めの五字を記しなさい(句読点を含む)。
Dとは具体的にはどのようなことか、簡潔に説明しなさい。
Eとは具体的にはどのようなことか、簡潔に説明しなさい。
Fの具体例として最も適当でないものを次から選び、記号で答えなさい。
イ 他社に先駆けて薄型化に成功した携帯電話
ロ 海外ブランドとの提携によるロゴマークを使用したバッグ
ハ 比較広告による宣伝
ニ やせる効果をうたって市価の十倍で通常のビタミン剤を販売する行為
ホ インターネットによる情報配信サービス
G 指示語や比喩表現の内容を明らかにして、分かりやすく言い換えなさい。
問4 次のイ〜ヘについて、商業資本主義と関係の深いものに1、産業資本主義と関係の深いものに2、ポスト産業資本主義と関係の深いものに3を、それぞれ記しなさい。
イ 遠隔地 ロ 情報の商品化 ハ 外部的な関係
ニ 農村の過剰人口 ホ 高度情報社会 ヘ 隠された構造
問5 次の太字の文章は本文の趣旨を要約したものである。空欄イ〜ホにあてはまる最も適当な語句をあとの語群から選び、記号で答えなさい。なお、各選択肢は一度しか使えず、同じ記号の空欄には同じ選択肢が入る。
情報の本質とは[ イ ]であり、[ イ ]は[ ロ ]を生みだす。[ ロ ]によって[ ハ ]の増殖が可能になる。[ ハ ]の増殖とは[ ニ ]の目的である。したがって[ ホ ]は、[ ニ ]の変質ではなく、[ ニ ]の基本原理があらわになった現象である。
語群…1 資本主義 2 情報の商品化 3 利潤 4 差異 5 資本
問6 本文の趣旨と最も関係が薄いものを次から選び、記号で答えなさい。
イ 市価一万円のスパイクにスター選手がサインしたものが一〇万円で競り落とされた。
ロ データのデジタル化が進んで、映像ソフト業界は海賊版対策に頭を悩ませている。
ハ インターネットサイトでのコンピュータの販売実績は増加の一途をたどっている。
ニ 音楽産業では、CDによる販売からダウンロードによるデータ販売へと中心が移りつつある。
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