更級日記「後の頼み(さすがに命は憂きにも絶えず)」  問題

 (※1)さすがに命は憂きにも絶えず、ながらふめれど、のちの世も、思ふにかなはずぞあらむかしとぞ、うしろめたきに、頼むこと一つぞありける。天喜三年十月十三日の夜の夢に、ゐたる所の屋のつまの庭に、阿弥陀仏立ち給へり。さだか aは見え給はず、霧ひとへ隔たれるやうに、透きて見え給ふを、せめて絶え間に見たてまつれば、蓮花の座の、土をあがりたる高さ三四尺、仏の御丈六尺ばかり bて、金色 c光り輝やき給ひて、御手片つかたをばひろげたるように、いま片つかたには、印をつくり給ひたるを、こと人の目には見つけたてまつらず、我一人見たてまつるに、 @さすがにいみじく、けおそろしければ、簾のもとちかく寄りても、え見たてまつらねば、仏、「さは、このたびは帰りて、のちに迎へに来む」とのたまふ声、わが耳一つに聞えて、人はえ聞きつけずと見るに、たれば、十四日なり。この夢ばかりぞ、のちの頼みとしける。
 をひどもなど、ひと所にて、朝夕見るに、かうあはれにかなしきことののちは、所々になりなどして、誰も見ゆることかたうあるに、いと暗い夜、六郎にあたるをひの来たる d、めづらしうおぼえて、
  B月も出でで闇にくれたるをば捨てに何とて今宵たづねきつらむ(※2)
とぞいはれ eける。
   ※1… 本文の前に、作者の夫橘俊通が亡くなった記事がある。
   ※2… 古今集(雑上)に「我が心慰めかねつ更級やをば捨て山に月を見て」とある。「をば捨て山」は、夫橘俊通の最後の任地、信濃の国にある山で、伝説で名高い。

問1 a〜eの「」の文法的説明として適切なものはそれぞれどれに該当するか、記号で答えなさい。★
    イ 接続助詞  ロ 断定の助動詞  ハ 格助詞  ニ 完了の助動詞  ホ 形容動詞の活用語尾

問2 @さすがにいみじく、けおそろしければを、「さすがに」の内容を具体的に補って現代語訳しなさい。★★★

問3 Aうちおどろきの意味を言い切りの形で記しなさい。★

問4 B月も出でで闇にくれたるをば捨てに何とて今宵たづねきつらむは、結局どういう気持ちを詠んだことになるか、次から最も近いものを一つ選び記号で答えなさい。★★
    イ 感謝  ロ 慰撫  ハ 悲嘆  ニ 感嘆  ホ 韜晦

問5 「更級日記」の作者は誰か、また、成立した時代はいつか。そして、そのおばにあたり、主に夫藤原兼家との結婚生活を回想して書いた作品を残した人の名とその作品名を順に記しなさい。★

Advanced Q.1 冒頭の一文にある「のちの世も」を、「」の用法が分かるように補って現代語訳しなさい。 

Advanced Q.2 B月も出でで闇にくれたるをば捨てに何とて今宵たづねきつらむについて、
       (1)Bで対照的に想定されている風景はどういうものか、簡潔に記しなさい。
       (2)闇にくれたるをば捨てにで間接的にはどういう人物が語られているのか、20字以内で記しなさい。



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更級日記「後の頼み(さすがに命は憂きにも絶えず)」 解答/解説

更級日記「後の頼み(さすがに命は憂きにも絶えず)」 現代語訳


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