昔、東の五条に 大后の宮おはしましける西の対に住む人有りけり。それを @本意にはあらで心ざし深かりける人、ゆきとぶらひけるを、a正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れにけり。在り所は聞けど、人の行き通ふべき所にもあら bざりければ、なほ憂しと思ひつつなむありける。またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひて行きて、立ちて見、ゐて見、見れど、 A去年に似るべくもあらず。うち泣きて、あばらなる板敷に月のかたぶくまでふせりて、c去年を思ひ出でて詠め dる。
B月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
と詠みて、夜のほのぼのと明けるに、泣く泣く帰り eにけり。(第四段)
問1 この作品の主人公に想定されている人物の名を記しなさい。
問2 文中に動詞の活用の意図的な誤用がある。それはどの語か、正したものを記して答えなさい。
問3 a正月、c去年の読みを現代仮名遣いのひらがなで記しなさい。
問4 bざり、dる、eにの助動詞の意味・終止形・活用形の名を記しなさい。
問5 @本意にはあらで、A去年に似るべくもあらずを現代語訳しなさい。
advanced Q. B月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にしてについて、
1) 何句切れの歌か。
2) B月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にしてを、A去年に似るべくもあらずを前提として、「月」や「春」がどうであり、「わが身」がどうなったというものか分かるように解説しなさい。
3) どういう感慨を示しているのか、次の中から二つ選び、記号で答えなさい。
1 郷愁 2 懐古 3 旅情 4 安堵 5 失意 6 哀悼 8 余韻
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