「伊勢物語」『芥川』　　問題

　昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、Ａ年を経てよばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ川を率て行きければ、　Q.1草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。
　行く先多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神　Ｂさへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓・胡�艪�負ひて戸口にをり、　Ｃはや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼はや一口に食ひてけり。「あなや。」と言ひけれど、神鳴る騒ぎに、（　Ｄ　）聞かざりけり。やうやう夜も明けゆくに、見れば、率て来し女もなし。足ずりをして泣けども、かひなし。
　　 Q.2白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを

問１　本文中から（１）主格、および、（２）同格の用法になる格助詞「の」をそれを含む分節で抜き出して答えなさい。

問２　Ａ「年を経てよばひわたりけるを」を口語訳しなさい。

問３　Ｂ「さへ」を文法上の用法の観点から、本文の趣旨に沿って解説しなさい。ただし、７０〜８０字程度で記すこととする。

問４　Ｃ「はや夜も明けなむ」について、
　　　�@　口語訳しなさい。
　　　�A　Ｃで使われている「なむ」と同用法になる「なむ」を含む例文を次から選びなさい。
　　　　　　１　　そちの宮になむ参りて侍る。
　　　　　　２　　そやつはまことには我がもとに入りて、やすらかに物取りてはいなむや。
　　　　　　３　　同じ枝に鳴きつつをりつほととぎす声はかわらぬものと知らなむ
　　　　　　４　　日本の法華経験記に見えたるとなむ。
　　　　　　５　　盛りにならば、かたちも限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。
　　　　　　６　　いふかひなく（私ノコトヲ話シ相手ニモナラヌ男ダト）は思はざらなむ。
　　　　　　７　　寄する波打ちも寄せなむわが恋ふる人忘れ貝下りて拾はむ
　　　　　　８　　ふぶきますます甚だしく、橇（そり）を履くゆゑ道遅く、日もすでに暮れなむとす。

問５　Ｄの空欄に文意に沿うよう、呼応（陳述）の副詞を本文中から抜き出して書き入れなさい。

advanced Q.１　草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ。」となむ男に問ひけるから、「女」のどういう境遇が伺えるか。一文（４０〜５０字程度）で簡明に説明しなさい。

advanced Q.２　白玉か何ぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものをの歌から、「男」のどういう心情が読み取れるか、簡潔に説明しなさい。

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