源氏物語「紫の上の死 1/3」(御法)   問題

 紫の上が病を得たのは五年前だった。その後、とかく体調がすぐれず、出家を願うが、源氏は許さない。その年の夏になって、消え入るばかりに衰弱してきた。死を予感した紫の上は、明石の中宮に死後のことを託す。こうして酷暑が続き、秋の気配が立った。時に、源氏は51歳、紫の上は43歳であった。次の本文を読んで後の問いに答えなさい。




 秋待ちつけて、世の中すこし涼しくなりては、(紫の上は)御心地もいささかさはやぐやうなれど、なほともすれば、かことがまし。さるは、身にしむばかり思さるべき秋風ならねど、露けき折がちにて過ぐしたまふ。(明石の)中宮は、参りたまひなむとするを、今しばしは御覧ぜよとも、聞こえまほしう思せども、さかしきやうにもあり、内裏の御使の隙なきもわづらはしければ、 @さも聞こえたまはぬに、あなたにもえ渡りたまは【  A  】ば、宮ぞ渡りたまひける。かたはらいたけれど、げに見たてまつらぬもかひなしとて、こなたに御しつらひをことにせさせたまふ。「こよなう痩せ細りたまへれど、かくてこそ、あてになまめかしきことの限りなさもまさりてめでたかりけれ」と、来し方あまり匂ひ多く、あざあざとおはせし盛りは、なかなかこの世の花の薫りにもよそへられたまひしを、限りもなくらうたげにをかしげなる御さまにて、いとかりそめに世を思ひたまへるけしき、似るものなく心苦しく、すずろにもの悲し。
 風すごく吹き出でたる夕暮に、 B前栽見たまふとて、脇息に寄りゐたまへるを、院(源氏)渡りて見たてまつりたまひて、「今日は、いとよく起きゐたまふめるは。この御前にては、こよなく御心もはればれしげなめりかし」と聞こえたまふ。かばかりの隙あるをも、いとうれしと思ひきこえたまへる御けしきを見たまふも、心苦しく、「つひに、いかに思し騒がむ」と思ふに、あはれなれば、
 A おくと見るほどぞはかなきともすれば風に乱るる萩のうは露
げにぞ、折れかへりとまるべうもあらぬ、よそへられたる折さへ忍びがたきを、見出だしたまひても、
 B ややもせば消えをあらそふ露の世に後れ先だつほど経ずもがな
とて、御涙を払ひあへたまはず。宮(明石の中宮)、
 C 秋風にしばしとまらぬ露の世を誰れか草葉のうへとのみ見む
と聞こえ交はしたまふ御容貌ども、あらまほしく、見るかひあるにつけても、「かくて千年を過ぐすわざもがな」と思さるれど、心にかなはぬことなれば、かけとめむ方なきぞ悲しかりける。「今は渡らせたまひね。乱り心地いと苦しくなりはべりぬ。いふかひなくなりにけるほどと言ひながら、いとなめげにはべりや」とて、御几帳引き寄せて臥したまへるさまの、常よりもいと頼もしげなく見えたまへば、「いかに思さるるにか」とて、宮は、御手をとらへたてまつりて、泣く泣く見たてまつりたまふに、まことに消えゆく露の心地して、 C限りに見えたまへば、御誦経の使ひども、数も知らず立ち騷ぎたり。先ざきも、かくて生き出でたまふ折にならひたまひて、御もののけと疑ひたまひて、夜一夜さまざまのことをし尽くさせたまへど、かひもなく、明け果つるほどに消え果てたまひぬ。
   宮も、帰りたまはで、かくて見たてまつりたまへるを、限りなく思す。誰れも誰れも、ことわりの別れにて、たぐひあることとも思されず、めづらかにいみじく、 D明けぐれの夢に惑ひたまふほど、さらなりや。さかしき人おはせ【  E  】けり。さぶらふ女房なども、ある限り、さらにものおぼえたるなし。

問1 @さも聞こえたまはぬにについて、
    1)「さ」の指示内容を明らかにして現代語訳しなさい。★★
    2)「聞こえたまは」の敬語について、敬意を表す主体と敬意の方向がわかるように説明しなさい。★★
問2 空欄AEに打消の助動詞「ず」を適切な形にして記しなさい。★

問3 B前栽の読みと意味を、読みは現代仮名遣いのひらがなで、意味は10字以内で記しなさい。★

問4 C限りの意味を漢字2字で記しなさい。★

問5 D明けぐれの夢とはどういう夢か、簡潔に説明しなさい。★★

問6 A歌の修辞を2点で説明しなさい。★★

問7 B歌の「後れ先だつほど経ずもがな」とは、端的に言うとどういうことか。15字以内で記しなさい。★★★

問8 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★


advanced Q.1 A、B、Cの各歌は、「死」を異なるとらえ方をしている。それぞれをどのようなものとしてとらえているか。違いが分かるように説明しなさい。

advanced Q.2 かくて千年を過ぐすわざもがなとはわかりやすく言うとどういうことか。

advanced Q.3 いかに思さるるにかとは、現代風にはどういうことをいうものか。



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