源氏物語「御簾の透影 1/3」(若菜上)   問題

 光源氏41歳。病重く、出家の志が強い兄朱雀院のたっての希望により、女三宮を正室として迎え入れた。そのことで深く傷ついた紫の上との間に立って、悩んでいる。かねて女三宮に思いを寄せていた柏木(かつての頭中将、現在は太政大臣の子息)は、光源氏と女三宮との間柄が疎遠になっていることを知り、ますます思いを募らせるのであった。次の文章を読んで後の問に答えなさい。




 三月ばかりの空うららかなる日、六条の院に、兵部卿宮(光源氏の弟蛍兵部卿)、衛門督(柏木)など参りたまへり。大殿(光源氏)出でたまひて、御物語などしたまふ。「静かなる住まひは、このごろこそいとつれづれに紛るることなかりけれ。公私にことなしや。何わざしてかは暮らすべき」などのたまひて、「今朝、大将(夕霧)のものしつるは、いづ方にぞ。いと aさうざうしきを、例の、小弓射させて見るべかりけり。好むめる若人どもも見えつるを、ねたう出でやしぬる」と、問はせたまふ。「大将の君は、丑寅の町に、人びとあまたして、鞠もて遊ばして見たまふ」と聞こしめして、「乱りがはしきことの、 @さすがに目覚めてかどかどしきぞかし。いづら、こなたに」とて、御消息あれば、 A参りたまへり。若君達めく人びと多かりけり。「鞠持たせたまへりや。誰々かものしつる」とのたまふ。「これかれはべりつ」「こなたへまかでむや」とのたまひて、寝殿の東面、桐壺(明石の女御)は若宮具したてまつりて、 B参りたまひにしころなれば、こなた隠ろへたりけり。 b遣水などのゆきあひはれて、よしあるかかりのほどを尋ねて立ち出づ。太政大臣殿の君達、頭弁(柏木の弟)、兵衛佐(柏木の弟)、大夫の君(柏木の弟)など、過ぐしたるも、まだ片なりなるも、さまざまに、人よりまさりてのみものしたまふ。やうやう暮れかかるに、「風吹かず、かしこき日なり」と興じて、弁の君(頭の弁)もえしづめず立ちまじれば、大殿、「弁官もえをさめあへざめるを、 c上達部なりとも、若き衛府司たちは、などか乱れたまはざらむ。かばかりの齢にては、あやしく見過ぐす、口惜しくおぼえしわざなり。 aQ.さるは、いと軽々なりや。このことのさまよ」などのたまふに、大将も督君も、皆下りたまひて、 dえならぬ花の蔭にさまよひたまふ夕ばえ、いときよげなり。をさをささまよく静かならぬ、乱れごとなめれど、所柄人柄なりけり。ゆゑある庭の木立のいたく霞みこめたるに、色々紐ときわたる花の木ども、わづかなる萌黄の蔭に、 Cかくはかなきことなれど、善き悪しきけぢめあるを挑みつつ、われも劣らじと思ひ顔なる中に、衛門督のかりそめに立ち混じりたまへる足もとに、並ぶ人なかりけり。容貌いときよげに、なまめきたるさましたる人の、用意いたくして、さすがに乱りがはしき、をかしく見ゆ。 御階の間にあたれる桜の蔭に寄りて、人びと、花の上も忘れて心に入れたるを、大殿も宮(蛍兵部卿)も、隅の高欄に出でて御覧ず。
 いと労ある心ばへども見えて、数多くなりゆくに、上臈も乱れて、冠の額すこしくつろぎたり。大将の君も、御位のほど思ふこそ、例ならぬ乱りがはしさかなとおぼゆれ、見る目は、人よりけに若くをかしげにて、桜の e直衣のやや萎えたるに、指貫の裾つ方、すこしふくみて、けしきばかり引き上げたまへり。軽々しうも見えず、ものきよげなるうちとけ姿に、花の雪のやうに降りかかれば、うち見上げて、しをれたる枝すこし押し折りて、御階の中のしなのほどにゐたまひぬ。督の君続きて、「花、乱りがはしく散るめりや。桜は避きてこそ」などのたまひつつ、宮の御前の方(女三宮のお部屋ほう)を後目に見れば、例の、ことにをさまらぬけはひどもして、 Dいろいろこぼれ出でたる御簾のつま、透影など、春の手向けの幣袋にやとおぼゆ。 【若菜上】

問1 aさうざうしき・b遣水・dえならぬの意味、および、c上達部・e直衣のよみを記しなさい。★

問2 @さすがに目覚めてかどかどしきぞかしを現代語訳しなさい。★★

問3 A参りたまへり・B参りたまひにしにおける敬語は誰に敬意を表すのか。人物は、帝・光源氏・女三宮・明石の女御・夕霧・柏木・女房(達)を使ってください。★★

問4 Cかくはかなきこととは何をそういっているのか、5字以内で記しなさい。★★

問5 Dいろいろこぼれ出でたる御簾のつまとは、何がどうしていることを言うものか、分かりやすく★★★

問6 「源氏物語」の成立した時代・作者の名・作者が仕えた中宮とその父親の名を順に記しなさい。★★

advanced Q. さるは、いと軽々なりや。このことのさまよとは、どういうことを言っているのか。分かりやすく説明しなさい。






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