枕草子「かたはらいたきもの」(第九十二段)  現代語訳

 かたはらいたきもの、よくも音弾きとどめぬ琴を、よくも調べで、心の限り弾きたてたる。客人などに会ひてもの言ふに、奥の方にうちとけ言など言ふを、えは制せで聞く心地。思ふ人のいたく酔ひて、同じことしたる。聞きゐたりけるを知らで、人のうへ言ひたる。それは、何ばかりの人ならねど、使ふ人などだにいとかたはらいたし。
 ↓ 現代語訳
 はたで聞くのもにがかにがしいもの、十分に弾きこなせもしない琴を、よく調律もしないで、思う存分弾き鳴らしているの。客などと会って話しているときに、(家族などが)奥の部屋で遠慮のない話などしているのを、制止することもできないで聞いている心地。愛する人がひどく酔って、同じことを繰り返ししゃべるの。(本人が)聞いていたとも知らず、(その)人のうわさをしゃべったとき。それは、(聞いていた本人が)どれほどの身分の人でなくても、(自分の)使用人の場合ですら本当にきまりが悪い。


 旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる。にくげなるちごを、おのが心地のかなしきままに、うつくしみ、かなしがり、これが声のままに、言ひたることなど語りたる。才ある人の前にて、才なき人の、ものおぼえ声に人の名など言ひたる。ことによしともおぼえぬわが歌を、人に語りて、人のほめなどしたるよし言ふも、かたはらいたし。
 ↓ 現代語訳
 外泊した先で、そこの下男たちがふざけているの。(はた目には)不器量に見える赤ん坊を、(その親は)自分の気持ちにはかわいく思えるものだから、いとおしみ、かわいがり、その子の声色をまねて、(その子の)しゃべった言葉などを人に話しているの。学問のある人の前で、学問のない人が、もの知りぶった声の調子で有名人の名前などを話すの。特別よくできたとも思われない自作の(第九十二段)

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