建礼門院右京大夫集「資盛との思ひ出」 問題

 次の文章は、平家都落ち前後のころの平資盛(たいらのすけもり)との思い出を回想したくだりである。これを読んで、あとの問いに答えよ。

 おほかたの世騒がしく、心細きやうに a聞こえしころなどは、蔵人頭にて、ことに @心のひまなげなりしうへ、あたりなりし人も、「あいなきことなり。」など言ふこともありて、さらにまた、ありしよりけに忍びなどして、おのづからとかくためらひてぞ、もの言ひなどせし折々も、ただ Aおほかたの言ぐさも、「かかる世の騒ぎになりぬれば、 Bはかなき数にならんことは、疑ひなきことなり。さらば、さすがにつゆばかりのあはれはかけてんや。たとひ何とも思はずとも、かやうに b聞こえ慣れても、年月といふばかりになりぬる情けに、 C道の光も必ず思ひやれ。また、もし命たとひ今しばしなどありとも、 Dすべて今は、心を、昔の身とは思はじと、思ひしたためてなんある。そのゆゑは、ものをあはれとも、何の名残、その人のことなど思ひ立ちなば、思ふ限りも及ぶまじ。心弱さもいかなるべしとも、身ながらおぼえねば、何事も思ひ捨てて、人のもとへ、『さても。』など言ひて文やることなども、いづくの浦よりもせじと思ひとりたるを、なほざりにて c聞こえぬなど、なおぼしそ。よろづ、ただ今より、身を変へたる身と思ひなりぬるを、なほともすれば、 Eもとの心になりぬべきなん、いとくちをしき。」と言ひしことの、げにさることと聞きしも、何とか言はれん。涙のほかは、言の葉もなかりしを、つひに、秋の初めつ方の、 F夢のうちの夢を聞きし心地、何にかはたとへん。
 さすが心ある限り、このあはれを言ひ思はぬ人はなけれど、かつ見る人々も、わが心の友はたれかはあらんとおぼえしかば、人にもものも言はれず。つくづくと思ひ続けて、胸にも余れば、仏に向かひ奉りて、泣き暮らすほかのことなし。されど、げに、 G命は限りあるのみにあらず、さま変ふることだにも心に任せで、一人走り出でなんどは、えせぬままに、 Hさてあらるるが心憂くて、
  またためしたぐひも知らぬ憂きことを見てもさてある身ぞうとましき

問1 a・b・cの「聞こえ」の意味をそれぞれ記しなさい。★★

問2 @心のひまなげなりし・Aおほかたの言ぐさ・Bはかなき数にならんこと・C道の光も必ず思ひやれ・G命は限りあるとは、分かりやすく言うとどういうことか。★★
   Dすべて今は、心を、昔の身とは思はじと、思ひしたためてなんあるとあるが、これと同じ趣旨のことを述べた箇所がほかにもある。その箇所を抜き出し、初めと終わりの三字で答えよ。★★
   Eもとの心とはどのような心なのか、具代的に説明しなさい。★★
   F夢のうちの夢とは、ここでは分かりやすく言うとどういうことか。★★

問3 Hさてあらるるとは具体的にはどういうことか。★★★

問4 「建礼門院右京大夫集」の読みと成立した時代の名を記しなさい。★


建礼門院右京大夫集「資盛との思ひ出」  解答用紙(プリントアウト用) へ

建礼門院右京大夫集「資盛との思ひ出」  解答/解説 へ

建礼門院右京大夫集「資盛との思ひ出」 現代語訳 へ


トップページ 現代文のインデックス 古文のインデックス 古典文法のインデックス 漢文のインデックス 小論文のインデックス

「小説〜筋トレ国語勉強法」 「評論〜筋トレ国語勉強法」

マイブログ もっと、深くへ ! 日本語教師教養サプリ


プロフィール プライバシー・ポリシー  お問い合わせ