先従隗始(『十八史略』巻一・楚)  訓読/口語訳

 燕人立太子平為君。是為昭王。弔死問生、卑辞厚幣、以招賢者。問郭隗曰、「斉因孤之国乱、而襲破燕。孤極知燕小不足以報。誠得賢士与共国、以雪先王之恥、孤之願也。先生視可者。得身事之。」
 ↓ 書き下し文
 燕人、太子平(へい)を立てて君と為す。是れ昭王為り。死を弔ひ生を問ひ、辞を卑(ひく)くし幣を厚くして、以て賢者を招く。郭隗(くわくわい)に問ひて曰はく、「斉は孤の国の乱るるに因りて、襲ひて燕を破る。孤極めて燕の小にして以て報ずるに足らざるを知る。誠に賢士を得て与(とも)に国を共にし、以て先王の恥を雪(すす)がんこと、孤の願ひなり。先生可なる者を視(しめ)せ。身之に事(つか)ふることを得ん。」と。
 ↓ 口語訳
 燕の人たちは、太子平(へい)を擁立して君主とした。これを昭王といった。昭王は戦死者を弔い、生存者を見舞い、(人心の掌握に努め)へりくだった言葉づかいをし、多くの礼物(俸禄)を用意し、賢者を(国に)招こうとしていた。(しかしその効果なく賢者が集まらなかったので)昭王は郭隗に次のように尋ねた。「斉は私の国が乱れていることにつけこんで、攻め入って燕を打ち破りました。私は、この燕の国が小国で、斉に報復できないことを十分承知しています。(そこで)ぜひとも、賢者を得て一緒に国を治め、先代の王の恥をすすぐことが私の願いです。先生、それにふさわしい賢者を教えて下さい。私はその方を師として仕えしたい。」



 隗曰、「古之君、有以千金使涓人求千里馬者。買死馬骨五百金而返。君怒。涓人曰、『死馬且買之。況生者乎。馬今至矣。』不期年、千里馬至者三。今王必欲致士、先従隗始。況賢於隗者、豈遠千里哉。」
 於是昭王為隗改築宮、師事之。於是士争趨燕。
 ↓ 書き下し文
 隗曰はく、「古の君に千金を以て涓人(けんじん)をして千里の馬を求めしむる者有り。死馬の骨を五百金に買ひて返る。君怒る。涓人曰はく、『死馬すら且つ之を買ふ。況(いは)んや生くる者をや。 馬今に至らん』と。期年ならずして、千里の馬至る者三。今、王必ず士を致さんと欲せば、先づ隗より始めよ。況んや隗より賢なる者、豈(あ)に千里を遠しとせんや。」と。
 是に於いて昭王隗の為に改め宮を築きて、之に師事す。是に於いて士争ひて燕に趨(おもむ)く。

 ↓ 口語訳
 郭隗は次のように言った。「昔の王に、千金(の大金)を持たせ、涓人(けんじん=君主のそば近くに仕え、雑用や取次などに従事する者、宦官が多かった)に、一日に千里を走る名馬を買いに行かせた方がいました。(ところが)死んだ馬の骨を五百金の値段で買って帰って来たのです。王は怒りました。しかし、涓人(死んだ馬の骨を買った人)が言うには、『死んだ馬(の骨)でさえ、(五百金もの大金で)買ったのです。生きている馬なら、なおさら高く買うに違いないと(馬を売る人たちは)思うでしょう。(千里の)馬はすぐにやってきます。』。(すると)一年もたたないうちに、千里の馬が三頭も集まったのです。今、王様が、どうしても優秀な人物を招きたいなら、まずはこの隗を賢者として厚遇して下さい。(そうしたら、)この隗よりも賢い人物は、どうして千里の道を遠いと思うでしょうか(遠いとは思わずに仕官しに来るはずです)。」
 そこで、昭王は隗のために新たに邸宅を造って、郭隗に師事した。そこで(このことを聞いた)賢人たちが我先にと燕に駆けつけたのであった。



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