太宰治「富岳百景」1/2  ヒント

 キー・ワード、キーフレーズを蛍光ペンなとで色分けしてマークしたりして考えてね。

問1(略) 

問2 「おあつらいむき」の「あつらえる」とは、注文して作らせるという意味。「おあつらいむき」とは、ここでは、まるで注文して作らせたように(通俗的なイメージに)ぴったり一致しているということ。

問3 連用修飾でかかる箇所は…?

問4 車内の客が、二項対立的に描かれている。
 【「その変哲もない三角の山を眺めては、やあ、とか、まあ、とか間抜けた嘆声を発して…ざわめ」く客たち】 ⇔ 【「富士には一瞥も与えず、かえって富士と反対側の、山路に沿った断崖をじっと見つめ」る老婆】
 その老婆に自己投影して共鳴する「私」。俗なるものを嫌悪し純粋なものに憧れる「私」という設定は作品全体のメイン・モチーフでもある。

問5 「実際の富士」=否定 → 「十石峠から見た富士」=肯定 → 「東京の、アパートの窓から見る富士」=否定。単調にならないように展開されています。否定と肯定の根拠は何か…?「十石峠から見た富士」では、それを「恋人」と逢ったときの話題と絡ませて語っています。今から70年以上も前のお話ということも念頭において。

問6 「苦しい小さい、真っ白い三角が、地平線にちょこんと出ていて…左のほうに、肩が傾いて心細く、船尾のほうからだんだん沈没しかけてゆく軍艦の姿に似ている…途方に暮れたひとりで、がぶがぶ酒のんだ。一睡もせず、酒のんだ…アパートの便所の金網張られた四角い窓小さく、真っ白で、左のほうにちょっと傾いて…、暗い便所の中に立ちつくし窓の金網撫でながら、じめじめ泣いて」と富士・心理・場面・行為などがないまぜになって語られています。「私」に何があったのか…?正確に読み取り、自分の頭脳の中で咀嚼・整理して簡潔にまとめます。

問7 問は『Aによって、かえって、Bになった』のパターン。Aが、意図することと逆のBの結果になる、という論理になることをインプットして読み考えてみて。
 「私」のいでたちは、「決して見よいものではなかった…どてら姿であった。茶屋のどてらは短く、私の毛脛は、一尺以上も露出して…ゴム底の地下足袋…われながらむさ苦しく…古い麦藁帽をかぶってみたのであるが、いよいよ変で」、「井伏氏は、人のなりふりを決して軽蔑しない人であるが…私をいたわってくれた」と辿り、『Aによって、かえって、Bになった』のパターンでまとめてみてください。

問8 「かねがね、こんな富士は俗でだめだ、と教えていた」「私」が、眼前の積雪した富士を認めざるをえなかった。前言は否定したくないけど、それと矛盾したことも認めざるを得ない…が…プライドは保ちたい…?読み取り、考え、文を組み立てる筋力が要求されている。

問9 「変哲もない」とは、取り立てて言うべきこともなく平凡だと否定的に評価する言葉。直後の「間抜けた嘆声を発して」にも「私」の富士への否定的なニュアンスが反映されている。


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